2011年3月30日水曜日

社内講師の心得(4) 受講者を「お客様」にしてはいけない

もう入社式は、あさって、と、すぐそこに迫ってきました。

社内講師の心得シリーズ。これは、新卒新入社員の研修を担当する方だけでなく、誰でも応用が効く話を書いているつもりです。ベテラン社員の研修担当者であっても、基本は同じですから。

今日は、「受講者を”お客様”にしてはいけない」というお話です。

新卒新入社員の場合、特にそうなりがち、なのが「お客さん化」です。

学生から社会人になったばかりなので、「学生の時の学習」と「企業での学習」の違いがよくわからない。わからないから、「受け身」になっていく。受け身になった上で、「お客さん化」していく。

たとえば、

●教室のレイアウト(机や椅子の位置や間隔、向きなど)は、「誰か」が整えてくれるもの、と思っている、あるいは、思ってしまう
●ホワイトボードが見づらい、配布資料が足りない、など、ちょっとしたことに対して、講師や人事部の方が「気づいてくれる」ものと思っている、あるいは、思ってしまう
●人事部の方や講師が重たい荷物を持っていても、ただ見ている。見ていても「手伝おう」などと気が回らない

といったような感じ。

自分の「不利益」(ホワイトボードが見えない、席の角度が気に入らない)に対しては、「誰かがなんとかしてくれるだろう」と思う一方で、他者に対しては、手を差し伸べることはあまりない。(講師の荷物を半分持ちましょう、とか、他の受講者が困っていたら、助けてあげましょう、とか)

全員がそうなるわけではないのですが、「受講者の”お客さん化”」は、少なからず発生する現象です。

自分が動く、自分が何かすれば、状況を変えられるにも関わらず、何もしない。そして、日報などに「ホワイトボードが見えなかった」「教室が寒かった」などと書く。

書かれた側もより厚いサポートをするようになる。

これ、よくないのですよね。

自社で仕事をするための基礎を学ぶ「新入社員研修」では、受講者とは言えども、新入社員は既に「仕事」をスタートしているわけです。(だって、お給料は発生しているのですから)

そうすると、ただ、口をパクパク開けて、「餌を口に放り込んでくれるのを待つひな鳥」のような状態になっていくことは極力避けなければならない。

では、誰が彼らをそうさせてしまうのか?

実は、新入社員が自然にそうなる面よりも、講師や人事の方がだんだんそうさせていくことのほうが大きいような気がします。

「日報」に「寒かった」「ホワイトボードが見えづらかった」と書かれたら(その日はもう終わっているので、問題の解決にはなっていないのに)、翌日、「ゴメンナサイね。今日は、暖かくしますから。また、寒かったら言ってくださいね。」と謝って、より気を遣うようになる。人事部や講師陣に「寒いようなので、配慮してあげてください」と伝令が回る。

いや、それはいいのですが(人事や講師などが配慮することももちろん大事ですから)、その時、「でも、日報に書いても、その時点での問題の解決にはなっていませんよね。その時、相談するなり、自分で空調のコントローラを操作したりしてはいかがですか?皆と合意を得て、自主的に動いていいのですよ。」と一言添えるだけでずいぶん変わって来るはずです。

学習は何のためにしているのか。

1日でも早く、現場で「使える人材」になるためです。

だから、必要以上に「至れり尽くせり」をしてはいけない。

人事部や研修講師が受講者に対して「至れり尽くせり」をすればするほど、実は、受講者(=新入社員)の成長を妨げてしまいます。

彼ら・彼女らをスポイルすることにつながるのです。

何か言われると年長者として、つい手を差し伸べたくなります。転ばぬ先の杖を差し出したくもなります。だけれど、誰のためにもなっていないことが多い。

新入社員研修は、何のためにあるのか。

新入社員自身にその意味を考えさせることも大事ですが、その前に、運営側がまずよく考え、心しておかねばならないことだと思っています。

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