2003年くらいからの私のライフワークに近いのが、企業の若手育成「OJT制度」を支援です。
「後輩の教え方育て方」という100ページくらいのテキストも作ってあり、各企業でそれも使ったワークショップを開催しています。OJT制度は、かなり個別具体的なので(当たり前です)、全てカリキュラムは異なっています。(OJT制度でなくても、教育というのは本来そうであるべきでしょうが)
各企業がOJT制度を始めたなあ、と思うようになったのは、2003年ごろです。これは、人事部や人材開発部、研修部などが主体となって「新入社員~3年目くらいまでに1対1でOJTトレーナーをアサインし、育成計画を立て、密に接しながら若手の成長支援をしていく」といったものです。
背景には、
●若手が育ちにくい(若者のせい、というよりも、仕事を取り巻く環境変化の要因の方が大きいと私は思っています)
●若手が定着しない
●若手がメンタル面の問題を抱えやすい
・・・なんてことがありまして、だから、「現場にお任せのOJT(=これを”お任せジョブトレーニング”という方もいらっしゃいます)」はやめ、制度化しましょう、というのが流れです。
上記の問題を解決しようと立ち上がった制度なので、当然、「関係構築」「褒めて育てる」(もちろん、苦言も呈するけれど、言い方はアサーティブに)「本人に十分考えさせる」「目的を事前にきちんと伝える」などなど、至れり尽くせりの体制と態度でOJTトレーナーは、若手に接するわけです。
こういうことをし始めて、いくつかの問題は解消されました。たとえば、
●若手が、まあまあ育つようになった
●若手の戦線離脱が減った(=実際、離職率が下がったケースもあります。)
●若手のメンタル面の問題が減った
・・・
ただ、ふと、最近、「これでいいんだろうか?」と思うようになりました。
ここまで「至れり尽くせり」で、周囲の上司、先輩は「あれこれと配慮してくれて、納得行くように指導してくれる」という環境を作りすぎたのではないか、と。
先日、TVで「屋内砂場が流行」というNEWSをやっていました。除菌・滅菌・・・。あらゆる「菌」から子供を遠ざけるために、と。危ないから、と。
外の公園の砂場であれば、そりゃ、変なものを手で触って怪我したり、感染したり、はたまた、クサイ思いをしたりすることもあるでしょう。
でも、それで、肉体の様々な耐性が身についたり、下手に手を突っ込んだら何かで怪我をすることがあるんだな、と学習したりしている面も少なからずあるはず。
今のOJTは、若手が「失敗しないように」「つらい思いをしないように」という方向にちょっと偏り過ぎてきたかなあ、と、支援している立場としても考えるようになったのです。
現場に出たら、
●理不尽な顧客もいる
●怖い上司もたまにはいる
●理屈どおりに行かないこともたくさんある
わけで、それを「こうしたらうまくいく」「こうすればよい」「自分で納得いくまで考えてご覧」というだけでは、本当の意味で、「若手の成長支援」をしていることにはならないのではないか、と。
無菌、除菌、滅菌だけしていては、心身は丈夫にならない。
多少の「菌」(という言い方もなんですが)に触れるチャンスを職場の学びの中にデザインしていくことも考えていく時期が来たように思います。
若手は育ちにくい、メンタル面で弱い、ストレス耐性が低い、すぐ折れる・・・。いろいろ言われていますが、ハードな場面を早い段階から経験させていないから、そうなるのかも知れません。
自分が乗り越えたという経験を持ったとき、「このレベルまではいける」という自信が付くことも多々あります。
今、40代50代の方だってきっと、「あの20代のあの出来事を乗り越えられた自分があるから、今も大丈夫だと思える」なんていう体験をひとつや二つお持ちでしょう。
若手育成の現場で、どうやって「菌」を埋め込んでいくか、を私は2011年の課題として取り組みたいと思ったのでした。
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