私は入社2年目から自分の興味に基づき、新入社員の後輩にプレゼンテーションや研修方法などを教えるテキストを作り、社内教育を実施していました。
ITよりそちらの興味が大きくなり、5年目27歳の時、米国本社で「インストラクション」や「コミュニケーション」の研修を受ける機会を得ました。
かの国の研修で目からウロコが落ち、「これを日本語化するぞ」と決意し、1991年初めて日本のお客さまに開催したのが28歳。(http://bit.ly/cfQMt3)
DECではこの時から社外向けにヒューマン・スキル研修を始めたのですが、周囲は「田中が何かやっとるなぁ、まあ、しばらく様子見よう」と放置して下さったのもラッキーでした。(バブル期だからですね)
担当者は私だけで。ここで問題になったのが「年齢」と「経験」です。
20代の私が「ビジネスパーソンとしてのコミュニケーション」なんて研修をするのは、時に苦しい。なんせ、実務経験が浅い。
「あなたは他社と契約を結ぶための交渉をしたことはあるのか?」
「あなたは何かのリーダーを務めたことはあるのか?」
と問われたら、NOだったから。
もちろん、28歳で上記全部クリアしている人もいるでしょうが、私にはなかった。
経験だけではなく、「20代」という年齢の若さが「30代40代の受講者」に対して、引け目でした。
だからひたすら、「早く30代になりたい」と思っていましたし、上司も「田中さんに期待するのは30になることだ」とも言われました。(受講者にそれを言われたことはなく、単に、自分が「20代では申し訳ない」と思っていただけです)
30歳の誕生日を迎えた時、「やったー!」と思いました。
30代になってようやく少し気持ちに余裕ができました。 が、いかんせん、研修講師がメインの仕事。
相変わらず、「顧客との交渉」も「顧客の前でのプレゼン」も「他社とのアライアンス契約」も経験が少ない。提案同行はしますが、「丁々発止」になることはあまりない。
年齢ではなく、実務の面で、まだ自信が持てない状態が続きます。
そんな最中、2000年の頃の話です。(37歳。結構いい年ですね)
「プレゼンテーション研修」にコンサルタントの女性が参加されました。途中で、「私の場合、こういうケースがあるのですが」と具体的事例を出されて質問されました。その時、私としては思いつく限りの知識と経験を挙げて解説したつもりだったのですが、事後、アンケートにはこうありました。
「講師は、”プレゼンテーション・スキル”は教えられるかも知れないが、現場をわかっていない!」
衝撃的です。
確かにコンサルタントがクライアントの前で行うようなプレゼンやそれに付随する交渉場面を肌感覚で味わっているか?と問われたら「否」でした。
大きなショックを受け、考えました。
「現場経験を踏む」のは大切だ。「現場に近い話」をしなければ、受講者も納得しない。 だからといって、あらゆる職種を体験できない。どうすればよいのだろう?
考えたことは以下のこと。
●自分の職種でも顧客との折衝、アライアンス契約だのやれることは沢山ある。そういう場にもっと出て行き経験を踏む。もちろん、システムの提案のように1回の案件が数千万といった経験ではないけれど、現場の体験にはなる
●それだけで不足するものは、2つの方法で入手する
1.研修の場で出逢う「実務家」から多くのお話を聞き、自分の中にストックすること(実際、年間1000人以上とお会いし、多くの現場の苦労、いい話など沢山耳にします)
2.それらを補うために、本を沢山読んだり学校に行ったりしよう
こういう積み重ねから自分の中に「本物体験」と「疑似体験」を増やし、受講者の納得度を上げる工夫をしてみようと。
その内、年齢も40代に突入。余り怖いものはなくなってきます。私より年長の受講者が大分少なくなりましたし、「もう20年は仕事してますから」と気持ちに余裕も生まれてきたからでもあります。
本当は、全てを体験できたらそれに越したことはないかも知れません。
「体験からの語り」ほど重いものはない。でも、それは無理だから、知識や人からの語りから学ぶ、という形で補充する。これでいいのかなあ、と思います。
かたや、「体験はない」けど、「本から得た知識」と「他人からの語りから得た事例」だけで自分を支えるのはちょっと怖いなあとも思います。
「あの人、理論ばかり先行だね」なんて思われてしまうでしょう。
(以前、「20代講師」の「40代50代の”中年期以降のモチベーションとキャリア”というのは・・」というセミナーを聞いた際、「ううぅ、、ちょっと違和感が・・」と思ったことがあります。正直な話(苦笑))
・・・ さて、特に女性へ。
年を重ねるのも悪くない。体力も記憶力も衰えるし、目も見えなくなるし、大変なことは多いけれど、自分の中に余裕が生まれる。
自信は今でもそんなにないけれど、色々なことに泰然自若としていられる。
質問に答えられない時、20代の頃は、「経験が浅いからではないか」とどぎまぎしました。今は、「うーん、47年間遭遇しなかったんだから、しょうがない。調べてみよう。誰かに聞いてみよう」と素直に思えるように。
その昔、女性は「Xmasケーキ」と言われました。「24歳までが旬」という意味ですね。(その後、「大晦日」と言われた時代もあったかと。「31歳まで」という意味(笑))
でも、何歳になっても、それなりに楽しいし、仕事に幅とか奥行きが出てくる気もします。
若い頃の無理(深夜まで働くなど)はできないけれど、幅や奥行きという別の面で勝負するってことができたら、それはそれで中高年も怖くない、と思うのです。
0 件のコメント:
コメントを投稿