2009年4月30日木曜日

旧ブログ記事:仕事の意味づけ(2009年4月30日掲載)

2003年から様々な企業の「新入社員OJT制度」支援やOJT担当者側の研修を数多く行ってきました。いまや、私の仕事の60%は占めると思われます。(3月~9月までに分散して「OJT担当者研修」を。12月~2月にかけては、「OJT担当者フォロー研修」をあちらこちらで行っています。)


*そもそも「OJT制度」とは何か、は、近々ちゃんと説明します。

とにかく、新入社員を指導する側の悩みや喜び、不安や疑問を数多く聞いてきました。

また、時々担当する、新入社員の研修を通じて、教わる側(新入社員)の不安や悩み、疑問、不満なども聞いています。

どちらにも言い分があり、その二者双方と関われる場合は、部外者として互いの気持ち、言い分を橋渡しすることもあります。

今日のテーマは、「雑用」です。

ある時、新入社員向けフォローアップ研修を実施しました。入社してから10ヶ月経った1月ごろの話です。

「これまでに上司や先輩にかけられた言葉で嬉しかったもの、励まされたもの」と「困ったもの、嫌だったもの」を整理してもらいました。


沢山のいい言葉、困った言葉が挙がった中で、「雑用」という用語が私のアンテナには引っかかりました。


たとえば、

● 「雑用は、××にさせておけばいいよ」と脇で先輩同士が話しているのが耳に入った(××は、新入社員の名前)

● 脇を通りかかった先輩に、「何しているの?」と聞かれ、一生懸命取り組んでいる仕事について説明したら、「それって雑用でしょ。」と言われてしまった

というものです。

いずれも、「がっくりきた」「傷ついた」として模造紙に書かれていました。


これで思い出したのは、別の企業でのある光景です。

人事部の方が、OJT担当者を集めた会で「配属前の注意事項」として、こんなことをおっしゃっていました。


「皆さん、新人は、”雑用係”ではありません。配属先でヒアリングをして回りますと、時々”雑用”を細切れに押し付けられているケースを耳にします。雑用ではなく、しっかりと”仕事”をさせてください。お願いします。」


「雑用」という言葉を国語辞典で調べてみると、それほど悪い意味はないようですが、上記の場合は、「育成などを視野に入れず、単に”あ、これがあったから、やっといて””そういえば、誰かがやらねばならないから、新人の君、ちょっと片付けといて”などと割り当ててしまう」ものをこの場合”雑用”と言っているのだと思います。


話は戻りますが、新入社員が「雑用」と言われ、傷ついた、不満に思った、と聞き、「と言っても、配属直後って何もできないし、任せられないし。それに、いわゆる”新人仕事”ってのもあるよね。」と思う方も多いはず。


それはそれでわかります。たとえば、”新人仕事”の筆頭になると思われる電話を取ること。これは、単に電話を取る、だけでなく、「ビジネスマナーを実体験」できたり、「どの企業と取引があるのかを学ん」だりできる、といったメリットがあります。

だったら、せめて「雑用は××にさせておけばいいよ。」「それって雑用でしょ。」ではなく、何かうまい表現を先輩側もしたいものです。

とても上手に動機付けをした先輩の例を聞いたことがあります。


その人は、新人時代、1年間、彼曰く「とてもつまらない、単調な作業」を任されていたそうです。いくら新人とはいえ、「ああ、つまらない」と思っていた矢先、近くの席の先輩が

「君がやっているその作業、地味だけど、非常に重要な仕事なんだ。皆のためにありがとね。」

と声を掛けてくれたとのこと。

これで、「ボクがやっていることは、先輩たちの役に立っているんだ」「単調だけど、意味のあることなのだ」と思え、次年度の新入社員に引き継ぐまで、不満は一切持たなかったと言います。


「意味づけ」をすることは大事です。

新入社員の場合、知識や経験が浅いため、自分で意味づけをするのは難しいかも知れません。

OJT担当者や上司、あるいは、直接指導に当たってはいないけれど先輩として新入社員の近くにいる人、誰かが彼らの仕事に「意味づけ」をする手伝いをしてあげればいいんですよね。

2009年4月29日水曜日

旧ブログ記事:学問のススメ(2009年4月29日掲載)

母校・上智大学の「コミュニティ・カレッジ」に通っています。 「エクステンション・カレッジ」などとも呼ばれる、公開講座です。(多くの大学で開催しています。) 

上智大の場合、春季講座、秋季講座と、それぞれ10回から12回程度の授業回数になります。(だいたい、ですが、4月~7月、10月~1月)

通い始めたのが1999年なので、もう10年です。

いつもは週1回だけとっているのですが、今季は週2コマにしました。仕事が終わってから(私が受講している講座は18:45開始です)なので、結構大変です。でも、楽しく”通学”しています。

実はずーっと同じ教授に師事しています。同じ教授の講座(テーマは毎回異なります)のリピーター仲間が大勢いるので、出張などで欠席しても、誰かがノートを取っておいてくださったりして。

年齢も職業も住まい(関東外からの参加者も!)もまちまちで、仕事で決して接点が持てない異業種、異文化に触れられる機会でもあります。

時々、先生も交えて、「懇親会(=飲み会?)」を開いたり。授業が終わってからなので、長くて2時間、さくっと、です。

期の途中から参加できる場合もあるようですから、 「そんなの、あるんだ!」と興味を持ったら、色々な大学のサイトをのぞいてみてはいかがでしょう?

私も以前、早稲田大学で心理学の講座、日本女子大学ではアサーションの講座(これは単発)に行ってみたことがあります。

いずれもその道の専門家である先生の講義を受けられ、とても勉強になります。

それにしても、夜な夜な大学に集まる人の多いこと。皆さん、「学びたい」のだなあ、と思います。

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1999年に受講しようと思ったきっかけは忘れてしまったのですが、たしか、「このままじゃいけない」と思っていたような気がします。講師業は、OUTPUT中心で、INPUTをなんとかしなければ、と。しかも、ちゃんと、アカデミックな内容を。

それ以外に、「世界が狭い」ことへの危機感もありました。

大学に通ったからといって、世界がぐんと広がるわけではありませんが、たとえば、普段、自分が使っている用語(業界用語など)が通じない世界は、わが身を振り返るのに役立っているように思います。

2009年4月28日火曜日

旧ブログ記事:御中(2009年4月28日掲載)

返信用の封筒やはがきの、「宛」「行」などを消して、「御中」や「様」に直す、ということを知らない人もたまにいるのだが、知っているからといって機械的にやっちゃあまずいよ、というケースもある。

ある男性がぼやいていた。

「この間、クラス会の幹事をしたんですけど、返信はがきの”行”が消されて、”様”になって戻ってきました。ボクの名前の一部なんだけど・・。」と。

彼の名は、「弘行(ひろゆき)」。

「弘(ひろし)」じゃないってば。

2009年4月27日月曜日

旧ブログ記事:これは何ですか?(2009年4月27日掲載)

“Is this a pen?”

“No, it isn’t.” 

“Is this a pencil?”

“Yes, it is.” 


という、英語の教科書の最初の方に出てくる会話に「ペンか鉛筆かなんて、見りゃわかるじゃないか」と突っ込んだ方は、大勢いらっしゃることと思う。

自然な会話じゃない、生きた英語じゃない、と。

ところが、この “Is this a pen?”みたいな会話をつい最近経験してしまった。


スーパーで買い物の折。まずは、果物コーナー。

目玉商品として、甘夏が単品で98円。カートにひとつ入れる。

他の食料品も入れて、レジへ。

レジ担当は、20歳くらいの女性で、「研修中」という名札をつけていた。


甘夏を手に取り、「これは、甘夏ですか?」と訊く。

こういう時、ちょっと動揺する。

『甘夏だと思うけど、ちゃんと表示を見なかったので、他のかんきつ類だったかも知れない。甘夏か?と言われると自信ない。』と。

小さな声で「ええ、たぶん、甘夏だと思うんですけど。」と答えると、

「これは、デコポンですか?」とさらに質問が。

『いや、デコポンってのは、おへそみたいなのがあるから、これは、デコポンじゃないよな。』と心の中で思いつつ、

「いいえ、デコポンではないです。」と言うと、

今度は「では、グレープフルーツですか?」と真顔で尋ねるのだった。


いよいよ、遠ざかってきた。『どう見たってこれがグレープフルーツのわけないだろー』と確信し、「絶対にグレープフレーツじゃありません。」と自信を持って答える。


すると、このレジの女性、あっさりと、

「では、これは、甘夏ですね。98円です。」 と宣言し、レジ終了。


スーパーを出る際、再度果物コーナーを見てみると、この会話の原因がわかった。

この日、単品売りしていたかんきつ類は、全部で3種類。甘夏、デコポン、グレープフルーツだった。彼女は、POSレジの単品ボタンを探していたのだ。


こういうの、コミュニケーション・スキル的に言うと、

「今日、単品売りのかんきつ類が3種類あります。甘夏、デコポン、グレープフルーツ。この内のどれかわかりますか?」

と解答範囲を決めてくれたら、もっと会話はスムースに進んだわけだ。

それにしても、デコポン、グレープフルーツとどんどん遠のいてくれてよかった。

もっと似たようなかんきつ類の名前を示されたら、たぶん、答えに迷っただろう。


そして、 “Is this a pen?” という会話は、実際に起こりうるのだ、ということを中学時代から30年以上を経て、改めて知った。


あれは、生きた英語だった・・・のだ。


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「うちは当分、新入社員が配属にならないんですよ」というメールを頂戴しました。


そこで、本日は趣向を変えて、身近な話題を。

2009年4月25日土曜日

旧ブログ記事:オカンは偉い!(2009年4月25日掲載)

数年前、4月下旬に担当した、ある企業の新入社員研修にて。


ランチタイムは、教室でお弁当。私も一緒に。少し離れた席から耳に届いた会話。

「オカンって凄いよな。」

「何のこと?」

「オレ、初めて一人暮らしして、家事がこんなに大変だと思わなかった。掃除も洗濯もメシも。」

「そうか。大変かあ。おれは、実家だからわからないけど。」

「そう、大変なんだ。やることが沢山あって。実家にいた時は、洗濯ものが出来上がっているのも、家が片付いているのも、飯が食えるのも、別にフツウのことだっただろ。あれ、全部、オカンがやっていたんだなあと思って。」

「そうだよな、おフクロがやっているんだよな。」


こんな面白い会話を見逃すはずもなく、早速近づき、会話に加わる。


「それ、いいことに気づきましたねぇ。GWに帰省するんですか?だったら、ぜひ、お母様に”ありがとう”って伝えてあげてください。うるうるしちゃうと思うから。」


すると、二人は、そろって首を横にブルブルと振り、こう言った。


「ぜーったいに言わない。」

「口が裂けても言えない。」


息子なんて、こんなもんですね、きっと。


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4-5月は、新入社員を巡る話を書こう、と過去の記憶をたどっていくと、思い出すのは、全て男性が主人公。特に、男性同士の会話が面白い。なぜだろう?


2009年4月22日水曜日

旧ブログ記事:上司の喜び(2009年4月22日掲載)

新入社員の指導にあたるOJT担当者とその上司が集まっているワークショップ研修でのひとこま。

アイスブレークを兼ねて、「これまでOJTを進めてきて、よかったこと、うまく行っていることを紹介しあう」時間を取りました。


グループごとに座っていただいていたので、各グループを巡り歩いていると、 ある課長がぽそっとこうつぶやいています。


「今のところ順調に成長していますが、人に話すような成功事例というほどでもないなあ・・・。あ、そうそう、成功事例ではないけど、ひとつだけ嬉しかったことがあるなあ。」


「新人に”この本、面白かったから読んでみたら”と渡したら、しばらくして、”面白かったので、自分でも買いました”と報告に来て。あれは、嬉しかったなあー。」

「どんな本だろう」と思い、尋ねてみました。

「差し支えなければ、なんという本か教えていただいてもよろしいですか?」

「ちょっと恥ずかしいんでけど、『夢をかなえるゾウ』って本です。」

・・・・

この上司の気持ち、わかるなあ。


世代の異なる部下や後輩に、自分の考えや思い、感性は通じるものだろうか、と思う。

新入社員を始めとして、若手社員は上司との年齢ギャップに悩み、苦労するのだけれど、実は、上司も部下や後輩とのギャップを気にしている。


お互い、探り探り、いろいろ試して、 相手との物理的距離や精神的距離を縮めている。


40代の上司にしてみたら、「オレはこれを読んで面白いと思ったけど、読んでみない?」と本を渡してはみたものの、新人は、それこそ上司に言われたので「はい」と一旦は受け取るだろうけれど、実は読まない、読んだとしても意味がわからないのでは?などと内心どきどきしてしまう。


数日経っての「面白かったので、自分でも買いました!」という言葉。どれほど嬉しい報告だっただろう。

わかる、わかる。その気持ち。


「それは、ステキな話ですね」とその場の空いている椅子に座り込み、一緒にしみじみしてしまいました。


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ファシリテーションのツールとしても流行りつつある 「マスキング・テープ」を使って、”しおり”を作ってみました。

<材料:マスキングテープ、リボン、紙袋の底に敷いてあった厚紙。右端の細長いものは、コーヒーショップでもらった細長い木製かき回し棒です。>

2009年4月20日月曜日

旧ブログ記事:LeaningBar@東大に参加した!(2009年4月20日掲載)

2009年4月17日(金)Learning bar @Todaiというイベントに参加してきました。 東京大学の中原淳さんが主催している、大人のための学び場です。

今回のテーマは、”みんなで「やる気」を科学する”でした。

ビールなど飲みつつ講演を聞き、参加者同士でディスカッションもする、という、画期的!?なイベントなのです。(何が画期的か、って、お酒を飲みながら、講演を聞くなんて、フツウないですよね。)

当日の詳細は、中原さんがブログに書かれているので、今日はスピーカーのお一人、JTBモチベーションズの大塚雅樹さんのお話について。

「誰かに自分の仕事を語ること」がモチベーションの維持や向上にもつながる。 たとえば、プライベートな場面でも。

例示として「合コンで自分の仕事を語れる?」などという場面も紹介されたのですが、相手が家族でも友人でも、自分の仕事を楽しく、面白く語れるか?と問い掛けられました。


その話を聞き、ふと思い出したのは、ある企業での新入社員向けフォローアップ研修で行った取り組みです。

入社10ヶ月目くらいの1月末。

新入社員に文章を書かせる練習をさせてほしい!というリクエストがあったので、事前課題として、

「不安だらけの内定者に向けて、自社や自分の職種について説明する”贈る言葉”を書いてください」

というお題を出しておきました。

当日、数十人の新入社員(もうすぐ2年目)が持参した文章を読んで感動したのは、どれもこれもに、
自分の仕事に対する自負やら矜持やらが文面から溢れていることでした。

社会人としての心構えや大切なこと、など、率直につづられていました。

この研修では他にも、仕事で困ったことや上司や先輩に伝えたいこと(よいことも悪いことも)について議論があり、中には不満もあれば、否定的なコメントも挙がっていました。


が、まだ見ぬ後輩への”贈る言葉”に、彼らは間違いなく、前向きで楽しい言葉だけを列挙しました。


嘘ではないと思うのです。

10ヶ月くらい「新・社会人」をやってきて、
がむしゃらに過ごしてきた中で、
ふと、立ち止まり自分の仕事を考えてみる。

考えるだけではなくて、
まだ見ぬ後輩に「SEってこういう仕事だよ」「社会人としての心構えはね」
なんてことを書いてみると、

そこに、ネガティブな内容は入らないのです。

カッコつけているとか、
よく見せようとか、
そういう面もあるでしょうが、
それより、
おそらく、
他者に贈るメッセージを考えた時、
あらためて
自分の仕事の意味や醍醐味、楽しさ、やりがいを感じ直したのではないでしょうか。


大塚さんがお話しになったプライベートな場面の例ではありませんが、

・・・後輩に自分の仕事を語る。

先輩になるんだという意識を刺激するだけでなく、自身のモチベーションを見直すきっかけになるに違いありません。


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「田中さんは、ネタ帳をつけているんですか」と時々聞かれます。

答えは、「つけていません」です。

なぜか、色々な出来事を鮮明に覚えているのですよね。

雑誌などへの寄稿記事でも多くの「エピソード」を
紹介するのが私のスタイルなのですが、
全て頭の引き出しから取り出しています。

たぶん、現場で見聞きしてこれは面白い!と思ったことを、誰かに何度も話している内に「長期記憶」に入ってしまうのでしょう。



実は、ネタ帳をつけようと思ったこともあったのです。
が、どうも長続きしないんです。



JTBモチベーションズの大塚さんとは対談をしたことがあります。こちらもどうぞ。

2009年4月19日日曜日

旧ブログ記事:「新入社員の山田です」(2009年4月19日掲載)

初夏の頃、取引先に電話すると、

「はい。○○会社○○部、新入社員の山田(仮)でございます。」

という声が返ってきました。

相手に取り次いでいただき、用件が済んだ後、

「新入社員の・・とおっしゃるのですね。ほほえましいですね。」

と尋ねたところ、

「社内で議論もあったのです。そんなことをわざわざ言うのもよくないのでは、と。でも、相手に失礼なことをしてしまう場合もあるので、お目こぼしいただければ、と思い、そう言わせているんです。数週間限定のつもりですが。」

と説明してくださいました。 


数日後の電話。再度「新入社員の山田(仮)です」と、同じ方が出たので、取り次いでいただく前に、ちょっとだけ会話をしました。

「新入社員の方なんですね。今は修行中ですか?電話は緊張しますよね?」

「あ、はい。電話ひとつでもどきどきします。私の対応は大丈夫でしょうか?」

逆に質問が戻ってきました。

「ええ、しっかりした対応だと思いましたよ。」

「あ、ありがとうございます。」

「がんばってくださいね!では・・・。△△さんは、いらっしゃいますか?」

「はい、少々お待ちくださいませ。」


・・・・・


たしかに、先方の担当者がおっしゃったように、「新入社員の」と名乗ることには賛否両論があるかも知れません。

でも、私は、「新入社員の」と名乗られたことで、ちょっと会話してみようかなと思いました。

顔も知らない相手ではありますが、親しみも感じ、「がんばってね」と応援したい気持ちにもなりました。

それは、新入社員研修を通じて、ひたむきに学ぼうとする多くの新入社員に出会ってきたからかも知れません。


あるいは、自分の新人時代と重ね合わせてしまうからかも知れません。


春は、「自分が新入社員だったころを思い出せる季節」でもあります。


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4-5月は、新入社員と、その育成に関わる「OJT」について紹介しようと思っています。「現代のOJT」とは何かについても少しずつ書いていきます。

2009年4月18日土曜日

旧ブログ記事:「年配の方」って(2009年4月18日掲載)

新入社員に対するフォローアップ研修(たいてい1月か2月ごろ行われます)にて。

「職場でのコミュニケーションで成功したこと、工夫していることは?」
「職場でのコミュニケーションで戸惑ったこと、失敗したことは?」というお題で「約1年のコミュニケーション」を振り返ってみました。

多くのいい話、課題など挙がった中で、こんな一文が発表の模造紙にありました。

「年配の先輩との会話が難しい」

ふむ。

「年配・・・。ちなみに、年配って何歳くらいの方を指していますか?」と尋ねてみると、

「うーん、10年目以上の社員の方です。」との答え。

後ろのほうで同席されていた数人の人事・教育担当者が、その言葉を聞き、一斉に机に突っ伏してしまいました。効果音を入れるとしたら、まさに「がくっ」です。

ランチタイムに人事・教育担当者さんとお話しをしたところ、
「私たち、だいたい入社10年前後なんですよ。年配なんだあ・・・。ああ、もう年配なんだぁ・・・。ショック」 とおっしゃってました。

新入社員の皆さんには、「”年配”という言葉はあまり使わないほうがいいかも知れません。年長者とか年上の方とか、そんな表現がよいのでは?」と提案しました。

言葉遣いはさておき、自分が新人だった頃を思い出してみると、たった1年先輩でも雲の上の人に見えたものです。ましてや、5年も上だったら、近づくのも恐れ多く、10年上だったらもうまともに目を合わせられないというほど、距離を感じました。

実際、自分が歳を重ねてみれば、30歳も40歳もたいした変化はないし、20代の方たちと距離を感じることも少ないのですが、それはこちら側の言い分であって・・・。

冒頭の振り返りでは、こんな話も出ていました。

「自分からは話しかけづらいが、上司や先輩と会話したいので、できれば話しかけていただけると嬉しい」

年上の人に話しかけるのにも、ずいぶん勇気がいるんですね。

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なお、新入社員が話しかけてもらって「何を」話したいか、というと、「仕事以外の話」だそうです。

もちろん、仕事の話も当然ですが、上司や先輩と「仕事以外の話」もしてみたい、と。「土日、どんな活動をしている」とか「こういう趣味がある」とか。

そんな会話から、上司や先輩の人となりを知ったり、精神的な距離が縮まったりするのではないかと推察します。

2009年4月17日金曜日

旧ブログ記事:「またかかってくるわよ」(2009年4月17日掲載)

新人だった頃の思い出。

ある日のこと。グループの代表番号にかかってきた外線電話を取りつごうと「転送」ボタンを押した瞬間に、誤って切ってしまうという出来事がありました。

まだ初々しかった(そういう時代もあったのです)私は

「とんでもないことをしてしまった。社外の方から電話を切ってしっまった。どうしよう?」

とパニックになり、そばに座っていた先輩に

「電話を切ってしまったのですが、こういう時はどう対処したらいいのでしょう?」

と泣きつきました。


先輩は、のんびりした声で、

「あら、大丈夫よぉ~。用があるならまたかかってくるわよぉ~」

と書類に目をやったまま言いました。


へ?と力の抜けたものの、再度かかる可能性のある電話器を凝視。

果たして1分もしないうちに外線が鳴り、ドキドキ。


「私が取らないほうがいいんじゃないでしょうか?」


「田中さんが取りなさい。そして、真っ先に”先ほどは失礼しました”とお詫びすればいいんだから。」

びしっと言われ、意を決して受話器をとりました。


お詫びすると、先方は「ああ、いいんですよ。よくありますよぉ」とおっしゃいました。無事転送し、自分の受話器を置いて、ほっ。


「ああ、失敗してもいいんだ。ちゃんとお詫びして、次にうまくやればいいんだ。」


そう思えたら、少し自信が持てました。


「大丈夫、またかかってくるわよぉ~」というのどかな言い方で緊張がほぐれ、「あなたが対処しなさい」とびしっと言われたことで、自分の責任でこなすのだ、と自覚が生まれました。

この先輩は、既に退職されていますが、あの時のオフィスの光景、ドキドキした気持ちなど、昨日のことのように思い出します。

2009年4月16日木曜日

旧ブログ記事:「新聞の練習」(2009年4月16日掲載)

「オレさあ、今、新聞を読む練習をしているんだ。」

「へぇ、新聞の練習かぁ。」

「電車の中でカッコよく読みたいじゃん。」

「だよな。」

「だけど、結構難しくてさあ。」

「そうなの?」

「そうなんだよ。オレがやると、どんどん大きくなっちゃうんだ。ほら。」

・・・なぬ?


振り返ると、新入社員2人がばらばらになった新聞片手に会話中。

「新聞を読む練習」とは、"新聞を小さく折りたたみつつ読む"練習 のことでした。



「真似」から始まる学習もあるよね。


頑張れ! 新入社員。

2009年4月15日水曜日

旧ブログ記事:「ワタシですか?」(2009年4月15日掲載)

電車の7人掛けのシートで、真ん中1人分だけ異なる色の場合がありますね。「ここが真ん中、これを基準に左右3人ずつ座れば7人きちんと座れますからね」という印のはず。


両端の席が空いていない時は、真ん中に座ります。

「自分は、正しい位置についた」と安心して、文庫本などを広げ、読んでいるうちにうとうと・・・。

しばらくして、ふと、左右がすかすかしている感じがする。

目を開けて確認すると、右も左も20センチくらい空いている。

さらに左右を見渡すと、右も2人、左も2人、微妙にゆったり座ってはいるものの、最も空いているのが私の左右合計40センチ。

「あなたが詰めれば、もう1人座れるのよ」という無言のプレッシャー。

「すみません」と小声で言ったりしてから、左か右にずれる。すかさず、1人が空いたスペースに座る。

気づけば、自分が一番KYな人になっている。

最初にど真ん中の「色の異なる座席」に自分の場所を確保し、間違いない、と確信までしていたのに・・・。いつの間にか「自分だけ堂々とゆったり座る、気が利かない人」になってしまった。

その上、少しだけずれたことで、座席クッションの境目の固いところがお尻の下にちょうど来たりして。

どうしてこんなことになったのだろう?と乗り込んでからこれまでの時間を振り返る。そして、ちょっとだけ、切ない。

2009年4月14日火曜日

旧ブログ記事:OJT担当者の呼び方いろいろ(2009年4月14日掲載)

「今年、はじめて”新入社員のチューター”をおおせつかり、どうしようとわくわくドキドキです」 というメールを仕事で知り合った方から頂戴しました。


近年、各企業では、新卒で採用した新入社員を育成するために専任の担当者を任命する方法がとられています。

育成期間は、半年から3年(入社3年後まで)と企業によってマチマチですが、たいていは、入社1年後(入社年の翌年3月まで)になっているようです。


さて、その育成担当の名前、各社各様です。例を挙げると・・・。


●OJT担当者
●OJTコーチ
●OJTトレーナー(あるいは、OJTトレーナ)
●コーチャー(あるいは、コーチャ)
●メンター
●アドバイザー
●チューター
●指導員

グローバルナレッジでは、「ブラザー/シスター」と呼びます。

面白いのは、40代に突入した社員でも

「○○さんは、ボクのブラザーだったから逆らえない」「××さんは、私のシスターだったので、今でも頭が上がりません」

などと言うことです(冗談交じりですけど)。

最初に面倒を見てくれた人のことは、忘れないのですね。


メールを下さったTさん、「新任チューター」、楽しんでください。 自分もうんと成長する機会になると思います。

2009年4月13日月曜日

旧ブログ記事:オレ・ぼく・わたし(2009年4月13日掲載)

もう何年も前。新緑の頃。


公開講座の参加者は、10年~20年の社会人歴を持つ6-7人の女性と、 たった一人の新入社員(男性)でした。 ベテラン女性に囲まれた、まだ入社1ヶ月という初々しい男性。


彼、普段の会話だけでなく、プレゼンテーション中も 「ボク」と自称するので、 フィードバックの際、他の方から「プレゼンの時だけでも”わたし”とおっしゃるほうが、きちんとした印象を与えますよ」

と指摘されました。

すると、

「見逃してください」

と切なそうにおっしゃいます。なにやら事情がありそうです。

「ボクは、最近、やっと”ボク”になりました。入社した直後は”オレ”だったんですけど、上司に”わたし”と言うように指導され・・・。 でも、22年も”オレ”だったのに、急に”わたし”とは言えず・・。今は、まだ”ボク”で勘弁してもらっているんです。

”ボク”に慣れたら、その内、”わたし”に挑戦するんで、今日は見逃してもらえませんか?」


フム、なるほど。     「オレ→ぼく→わたし」。


緩やかな、「オトナ」への道。

2009年4月8日水曜日

旧ブログ記事:「社会人のジョーシキ」(2009年4月8日掲載)

「それって、社会人のジョーシキですよ」

と笑いながら言うと、

「田中さん、僕たちは、その”社会人のジョーシキ”がないから、新人研修を受けているんです!」

そう言いながら、彼らもまた笑っていました。


数年前、とある企業で担当した新入社員研修でのひとこまです。
10人くらいの新入社員に対して、コミュニケーションやプレゼンテーションの研修を計4日間。


少人数なだけでなく、全員がとても明るく前向きで、研修は楽しく進行しました。休憩時間も様々な話題で盛り上がった中、何のことからか、私が冒頭のようにコメントしました。

彼らの言葉を聞いて、「確かに!おっしゃる通り。参りました」と思わず深く納得したものです。

私たちは、ついつい「それは社会人の常識だ」とか、「そんなことは●●業界では常識だ」などと言ってしまいますが、相手にとっても、それが常識なのか、そもそも本当に”それ”は常識なのかをよく考えずに会話を続けていることもあります。

各社に新入社員がやってきました。ちょうど新入社員研修を開催している時期です。
4月は「社会人のジョーシキ」とは何かを、教え育てる側も再度考えてみる季節なのかも知れません。