2009年7月24日金曜日

旧ブログ記事:DNA(2009年7月24日掲載)

5年くらいから毎年お邪魔している企業があって、その時知り合った参加者は既にそれぞれがシニアな層(たとえば、ライン管理職など)になっていらっしゃったりする。

毎年そちらに伺うと、その年の参加者のどなたかが、「田中さん、明日クラスが終わったら、懇親会しようと思うのですが、参加していただけませんか?」と声をかけてくださる。

私は夜、大学に通ったりしているので、都合が合う場合とそうでない場合があるのだが、合えば「はい、ぜひ!」と参加させていただく。

今年もお邪魔したら、若手社員の方から「夜の懇親会」へお誘いを受けた。また、日中(ランチタイム)には中堅層から「ランチに!」と誘われた。

こういうこと、実は珍しい。

講師は、基本、「ひとり飯」である。近所をうろうろしてどこかのお店に入るか、お弁当を買ってきて、教室または控え室を使わせていただくことが多い。なので、誘われると驚き、ちょっと嬉しくなる。

なぜ、毎年、必ず、どなたかが声をかけてくださるのか?

聞けば、「先輩が去年、田中さんを誘ったというのを聞いて、自分もそうした」とか「先輩から、”社外から来る人となかなか交流が出来ないのだから、色々な話を聞いて吸収しておいで”と言われ、誘ったんです」とか、先輩や上司からなんらかの刺激を受けて、「講師を誘う」行為が脈々と引き継がれているようなのだ。

「そういえば、誰がこれを始めたのだろう?」とお食事中にどなたかがおっしゃった。

「ボクは、●●先輩の真似をしているんだ」
「●●先輩は、××先輩の真似をしたんじゃないかと思う。だって、××先輩は、そういうことを熱心に言う方だから」
「じゃあ、××先輩は、誰の影響を受けたのだろう?」
「その上の世代は、年が離れすぎていて、もう分からないなあ・・・」

という会話の後、「こういうのも、DNAのひとつなのかも知れませんね」という結論になった。

人材育成というのは、今目の前にいる後輩を直に指導するだけじゃなくて、将来の後輩、まだ見ぬ後輩へも影響を及ぼす仕事なのだ、と常々思っているのだけれど、たとえば、「社外の空気に触れるために、よそから来た講師と懇親する」ということもこのように引き継がれていく場合があるのだ。

ところで、今年誘ってくださった方は、入社2年目。本当にお若い。彼は宴席に着いたら、真っ先に、
「改めて自己紹介します。私は、学生時代は・・をしていて、その時、バイトで知り合った先輩の影響でIT関係を考え、今の会社に入社し・・・」と、正座しながらお話ししてくださった。

こんなに真面目な自己紹介を受けたのは久しぶりで、その礼儀正しさと丁寧さに、感動し、素晴らしいなぁ、と思ったものだった。

先輩たちの顔を思い浮かべ、「いい後輩を育てていますね」と心の中で呟いた。

*** 追記(2011年5月15日) ***

この記事には、同僚の横山哲也から、コメントがついておりました。許可なく(怒るまい)、こちらに再掲載します。「ミーム」、覚えました。


「横山です。まさにミーム(meme)の伝搬ですね。いいお話です。ミームは文化や習慣を伝搬する情報単位です。詳しくはこちら。





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