2010年8月13日金曜日

旧ブログ記事:本を媒介にしたコミュニケーション(2010年8月13日掲載)

ロシア語同時通訳で有名だった米原万里さん(晩年はTVのコメンテーターやエッセイストとして活躍)のエッセイを読んでいます。通訳業を介して会得したコミュニケーションの極意だとか、世界の有名人のいろいろなこぼれ話だとか、ご自身が大好きな猫や犬の話やら、それはもう多岐に渡るエッセイをものにしている方で、早世されたことが悔やまれます。

さて、そのエッセイにこういう話が出てきます。

子供の頃、プラハのロシア学校に通っていて、そこでは、とにかく沢山の本を読んだ。日本語にも飢えていたし、ロシア語も勉強しないといけないので、ロシア語の本も沢山読んだ。

学校の図書館で本を借り、読み終わって返却しにいくと、司書の方が、かならず、
「この方の要旨を言いなさい」
と言う。

だから、必死で読むし、必死で主旨を理解するし、要約するために表現も工夫した。

文学の中身だけではなく、語学力も向上した、と。

学校の図書館の司書って、どういう立場の人なんだろう?と私自身は小学校時代に疑問でしたが、このように子供に「返却する前に要約しなさい」なんて言うのは、スゴイ教育ですね。いい刺激になるし、生きた学習になると思うのです。

ところで、昨年研修でお邪魔した企業で耳にした例です。

社長トップダウンで、「読書が奨励」されており、新入社員とOJT担当者とでも同じ本を読み、対話する時間を設けるようにしている。

何か一冊本を決め、OJT担当者も新入社員も読む。
週に1回、面談する際に、その本についても会話を交わす、というのです。

「この章を読んでどう思った?」とOJT担当者が新入社員に質問することもあれば、「このエピソードと似たような体験をしたことがボクはあるんだけど」とOJT担当者の経験を新入社員に語ることも出来る。

こういう「本」を媒介にしたコミュニケーションは、どこでもすぐ試せそうないい方法ですね。

本は、新入社員に選ばせるのも手です。普段読書と縁がない人であればなおさら。本屋さんに行って、いろいろ手にとって、「これ」と決める過程は、案外わくわくするのではないかとも思います。

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