2011年6月17日金曜日

愛の続きの続き。

「仕事に愛を」エントリーはことのほか読まれたらしく、このブログ内ランキング(って、自分のエントリー限定ですよ)1位になっていました。ありがとうございます(笑)。

調子に乗って、続きです。

プレゼンテーションの研修では、自分の好きなテーマでプレゼンをしていただくことが多く、そうすると仕事ネタでテーマ設定する方が大半です。(中には趣味など、プライベートの領域からテーマを選ぶ方もいらっしゃいますが)

演習の際、一人10分程度でプレゼンテーションをしていただきます(ビデオ撮影もします)が、プレゼンテーションのスキル(話し方、立ち居振る舞い、資料の作り方)とは別に大切なことがあるなあ、と毎回思います。

よどみなく話す。前を向いて堂々と話す。見やすい資料。ポインター(指し棒)も綺麗に扱う。など、スキル面では、10個も20個もクリアするポイントがあります。が、それらが全部出来ていても、なにか心に響かないケースがあるのです。

もう15年くらい前の話です。

中堅SEの方が自社サービスについてプレゼンなさいました。彼は、基本的スキルはクリアしていたので、一見、「プレゼンに慣れている」と思え、研修に来なくてもよかったのでは?と他の受講者からも言われていました。

しかし、10分間聞いていて、何か心に響かないのです。なぜだろう?としばらく考えていて、恐る恐る切り出してみました。

「○○さん、プレゼンテーション、ありがとうございました。基本スキルは全部網羅されていますよね。慣れているなあ、と思いました。」
「ありがとうございます」
「それで、一つ質問していいですか?」
「はい」
「もしかすると、ですが、○○さんは、今説明したサービスのこと、あまり好きではないんじゃないかな、と思ったのですが・・・。思い違いだったらゴメンなさい」
「えっ!? なぜわかったんですか?」
「図星ですか?」
「ええ、実は好きじゃないんです」

・・・

詳しく伺うと、今、プレゼンで紹介したサービスは、元々自分の担当ではなかった。前任者が退職し、自分は引き継ぐことになった。新任担当者としてお客様に紹介する任務があるため、今日の研修でもそのサービスをテーマに選んだ。でも、少し勉強してみたけれど、全然好きになれないし、思い入れも持っていない。なんてことをおっしゃってくださいました。

バーバルもノンバーバルも(言葉も言葉以外も)、「上手」な方に入るこの○○さんでも、それだけではカバーできない何か、空気みたいなものを私は感じたのでした。

「きっと、好きじゃないんだろうなあ。無難にこなしたけれど、説明の中にサービスに対する”愛”が感じられないものなあ」と思っていたのですが、どんぴしゃだった訳です。

彼は、私の指摘に焦ったらしく、最後にポツリと。

「ダメですね。好きじゃない、思い入れがないものをプレゼンしてては。というか、自分が扱い製品とかサービスを、いくら上手に説明しても、やはり、想いが透けて見えちゃうんですね。まずは、サービスを好きになることが先決ですよね」。

うん、そう思う。

スキルではカバーできない、空気のようなものを聴き手は察知するものです。

逆に、多少プレゼンスキル自体が荒削りでも(話し方が朴訥としている、資料があまり綺麗ではない、など)、「想い」を感じさせるプレゼンは、人の心を動かすものだと思います。

「ああ、この人は、この製品・サービスを愛しているんだなあ」と聴き手が感じられた時、聴き手側に何かを残すことができるような気がします。

3 件のコメント:

  1. こんにちは。
    今頃ですが、ブログのお引っ越し、おめでとうございます!

    しみじみ仰る通りだなぁと思いつつ読ませていただきました。
    特に。「好きなところを探す」というのはわかりやすくていい方法ですね。私も社内で使ってみます!

    それで思い出したのは、映画評論家の淀川長治さんです。
    淀川さんの解説の特徴は、どんな作品についても、その作品の素晴らしいところを熱心に語られるということでした。
    映画に出てくる人たち、それを陰で支える人たち、そしてそれを観る人たちを心から愛しているのが伝わって来るような語りでした。
    笑顔やころころ変わる表情も素敵でした。

    やっぱり愛ですね!

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  2.  「愛」三部作…否、別のブログやニシ100で、よくお見掛けする横山さんまで…淳子さんの周りが「愛」で一杯です。若い世代に「スキルでカバーできない空気」を如何に伝え・育てるかに悩む僕には、本当に有り難く思います。
     先ずは、彼らが「逃げずに関わって、良い所を見つける」環境を作らないといけませんね。後、旧ブログで紹介されてた「空港のシステムエラーの際、エラー復旧より、現場見てこい」と叫んだ上司の様に…関与先で如何に自分たちの提案が機能してるかを肌で感じさせないといけませんね。
     そんな中、彼らがどんな失敗をしようと、最後に出て行ってリカバリーできる僕自身の【仕事の余裕度】
    を拡大しなければ…と思う昨今です。

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  3. 匿名さん:コメントありがとうございます。淀川さんって、いいことしか言わなかった記憶があります。映画が本当に好きなんだなあと思うような解説でしたよねぇ。

    itoplanさん:いつもありがとうございます。
    「ここはいいから、現場へ行け」の上司は、カッコいいですよねぇ。

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