最終ページにあった以下の部分がとても印象的だったので、まずは紹介。(同書 P.231-322)
●「社会化」されている間になくなってしまうようなものは、「個性」ではない。まさに、「個性」が「個性」でありうるために「社会化」が必要なのである
●「個性化」のまえに、「社会化」が必要である
●「個性」は、「社会化」される過程で、「社会化」に還元されないその「個」の個別性として浮上してくるものである
●いったん市民(国民)として自立したうえで、「自分がどう生きていくか」(「個性化」)はまったくその「個」の自由に委ねるべきである。
この本は、中高生を中心とした「子ども」の「オレ様化」について解説しているが、私には子どももいないし、現在の学校の状況がどうなっているかを肌で感じる体験はしていないので、学校教育と子どもについて云々するつもりはない。
引用・紹介した部分を読んで私が感じたのは、「新入社員」の育成でも同じことが言えるのではないか、ということだ。
「個性」「自分らしさ」を追求し、「自分らしいこと」を全面に打ち出す前に、企業人としての「社会化」プロセスが必要なのだ、と読み替えることが出来る。
多くの人事・人材開発担当の方とお話ししていると、時々、「ん?それは違うんじゃないか」と思う事例を耳にする。
たとえば、
●「新人研修で、こいつ、寝ないで頑張っているんですよ。一人だけ。変なの」と、寝る自分のほうが正しいと主張する新入社員とそれを聞きながら、ただ苦笑いをしているだけの人事担当者。どうして叱らないのですか?と尋ねると、「最近の若手はそんなもんかなあと思って」と気にする様子もなく、何か変。
●「新入社員の何分の一かが”ウォレットチェーン”を腰からぶら下げていて、あれは、ビジネススーツにいいのか?」とは思ったけれど、「ファッションなのかなあ」と思い、今年は認めた、と仰る方。それも何かがちょっと変。
●「身体を大事にすることは重要だから、新人研修中に具合が悪かったら、すぐ休むように」と何度も言ったら、新入社員研修の期間中、全日程無遅刻無欠席だった新入社員は、ゼロだったという企業。「ちょっと体調が悪そうなんで、今日は休みます」というTELで認めているのだそう。(具体的に熱があるとか症状があるではなく、”体調が<悪そう>なんで”で、そんな簡単な理由で多額の投資をしている新入社員研修の受講をしなくてよい、と許可してしまっていいのか?と私は疑問)
こういった話を聴くにつけ、なんだか「???」な気分だった。(幸いにして、今年は今のところ、こういう例を聞かない)
「個性」を大事にする前に「社会化」が必要、の箇所に大きく響いたのは、上記が全て「社会化」の前に「個性」を大事にし過ぎたための現象に見えるから。
本書にもあるように、「ちょっと社会化されたくらいで消えてしまうような”個性”は本来、個性じゃない」はずなのに、「ウォレットチェーンを認めないのは、没個性を組織が強制している」みたいな論調にもしなるとしたら、やはり何か違和感がある。
ビジネスパーソンとしての、ある程度ルールに従った「服装」なり「行動」なりがあるからこそ、組織は動いていて、まずは、その基本のルールや形式を学び、全部消化したうえで、その中から「個性」を打ち出していけばよいのだ。
それに、一度全てのルールや形式を学んでから、それでも「ここだけは譲れない」というのが、本当の「自分らしさ」なのではないだろうか。
この本では、別のページで、「社会化」はよくないから、「個性化」が大事、とやりすぎた結果、自分の規準が作れない子どもが妙な方向に進み、それを「個性だ」と思ってしまう現象についても述べている。「規準」がないところに、「自分らしさ」を設けるのは難しいから、そうなってしまうのだろう。
このことはは、昔からある「守破離」という言葉も実は同じことを表現しているはず。
IT企業は、7/1に新入社員の配属が行われるケースが多い。OJT担当者に任命された先輩達は、今、職場への迎え入れ準備で忙しい時期である。(私の、その「OJT担当者」支援研修で全国飛び回っている)
「個性化」の前に「社会化」。
うまく伝えないと、「全員一律に無批判に同じ方向を向いてやれというのかー」と批判を受けそうだけれど、そういうことではないので、あしからず。
========お知らせ========
2009年7月15日から2010年3月31日まで配信された日経BPケイタイ朝イチメール「コミュニケーションのびっくり箱」が「電子書籍化」され、今週6月18日(金)に発売されます。
ケイタイ専用の文庫仕立て。なんと「縦書き」で、流麗な雰囲気の”紙面”です。
詳細は、6/17(木)に紹介します。
よろしくお願いします。
*** 追記(2011年5月28日) ***
この「電子書籍化」は、正確にいうと、「デジタル版」と言い、3Gケイタイでダウンロードできるものでした。今も販売はしていますが、最終回までが収録されているわけではないので、あまりおススメしません(笑
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