2010年6月1日火曜日

旧ブログ記事:「研修慣れ」は受講者と講師双方の問題(2010年6月1日掲載)

一社向けの研修を実施する際は、事前に人事・研修担当者と講師が顔合わせを兼ねた打ち合わせをするケースが多々あります。

「何か留意点はありますか?」

とお尋ねすると、時々、

「当社の社員は、”研修慣れ”をしていないので、最初はしーんとしているかも知れません。ディスカッションでも活発な意見が出るまでに時間がかかります。反応も薄いので、聞いているのか?と思う講師もいらっしゃるようです。真面目に取り組んでいるのですが、外面に現れないだけですので、火がつくまでじっくり付き合ってください」

と言われることがあります。

考えてみたら、これは当然のこと。

「研修慣れ」していない=「研修に参加する回数が少ない」という方は、「研修」という場で、「どのように振舞えばよいのか」という経験値がありません。

だから、講師に問い掛けられても戸惑うし、どう反応したらいいのかもわからないし、グループワークで1人だけ張り切ってもなんだし、発言しすぎてKYと言われても困るし、とぐるぐる考えてしまうのは当たり前です。

特に、日本人は奥ゆかしいので、周囲をよく観察して、自分の「その場」での立ち位置、振舞い方を決めていきます。

講師側は、問い掛けたら、どんどん反応してほしい、疑問があれば、事後のアンケートにコッソリ書くのではなく、研修のその場で発言し、解決してほしい、と思うものですが、「そうしてよい」と思わせ、安心して「そうしよう」と感じられるような場作りが出来ていなければ、積極的(に見えるよう)な態度で研修に臨むのは怖いはず。

一方で、講師が講義をしている最中に、「あ、ちょっといいですか?そこ、僕は反対の意見を持っているんですが」とか「この部分については、他の参加者の考えや経験を聞いてみたいんですけど、いいですか?」などと発言する受講者がいるとします。

このとき、「え?話している最中なのに、割り込まないで欲しいなあ」と思う講師もいます。この講師は、別の意味で「研修慣れ」していないのです。

講義中、受講者は静かに聴いているもので、「質問はありますか?」と尋ねた時間だけ質問はしてほしい、と思っていると、途中で流れを一旦止めるような発言があった時、対応に困ってしまうわけです。

アメリカで研修に参加すると、もう誰も黙ってはいないし、講師にどんどん反論するし、受講者同士で議論もするし、にぎやかで、講義を黙ってずっと「拝聴している」なんてことはありません。こういう空気を日本の研修でも実現したいと思ってずっとこの仕事を続けていますが、この「丁々発止」を実現するには、受講者の「研修慣れ」だけではなく、講師の「研修慣れ」も必要だと思い至ります。

講師も鍛錬の日々です。

研修は、「講師の話を聞く場」ではなく、受講者が「講師の話も聴きつつ、自分で考え、自分で気づき、次に何を生かしていくかを決める場」です。

自習するより、学ぶ場に身を置いて、他者(講師や他の受講者)と関わり合いながら、自分の知識やスキル、考え方を整理していくことにこそ意味があります。

そういう風に場を活用できるよう、受講者が安心できる、和める雰囲気を作るのは、私たち講師の責任です。

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