「模造紙にまとめた瞬間、言葉が全部抽象的になってしまう」
という現象があります。
例を挙げます。
「よい交渉とはどんな交渉でしょうか?」という議論をしていただくと、成果物である模造紙に書かれているのは、
●事前準備がしてある
●相手と信頼関係がある
といった表現になります。
全然わかりませんよね?何を指しているのか。
実際にはグループ内でもっともっと具体的な話をしているんですよ、皆さん。
だけれども、模造紙に書いた瞬間に抽象的になってしまう。
ただ、一緒に話し合っていたグループのメンバはまだいいのです。会話に参加し、具体的な例も聞いていたから。
問題は、この模造紙を見ながら発表を聞いているクラス内の他の方たちです。
●事前準備がしてある
●信頼関係がある
これを見て、何も具体的なことはわからないはずなのに、「何か質問は?」と問い掛けても「いや、わかるので、大丈夫」とおっしゃって、質問しない方が大半です。
ホントは、「事前準備とは、たとえば何をどうやっておくのですか?」などと突っ込むべきところなはずなのに。
「わかった気になる」というのは、ワークショップで危険なことだと思っています。
ワークショップだけではありません。日常の実務においても、「わかった気になっている」ことは案外多いように思います。確認しなければならないのに、「わかったからいいや」と思い込む。「たぶん、こういうことだろう」と自分が持つ予備知識と結びつけての勝手な解釈など。
わからなければ、不確かならば、どんどん質問すればいいし、すべきなのに。質問してより深く理解したほうが自分にも相手にもよいことなのに。
よく「部下には”具体的に考えてほしい””問題意識を持ってほしい”」という声を聞きますが、こういうワークを見ていると、”具体的に考える””問題意識を持つ”というのは、若手だけでなく、中堅・ベテランでもとても難しいように思います。
「それはどういうこと?」
「たとえば?」
といった「突っ込み力」はとてもとても大事なのです。
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