2009年8月12日水曜日

旧ブログ記事:「○○星人」って・・・・絶句・・・【追記あり】(2009年8月12日掲載)

もう10年以上も前のことになるけれど、研修で出向いた先で体験した忘れられない出来事がある。

ある企業で2泊3日のコミュニケーション研修を東京と大阪の2箇所で複数回実施していた。(対象者は入社10年目くらい。)中堅からベテランへと移行しようという時期に、今一度「顧客とのコミュニケーションを見直してほしい」というのが会社側の意図であった。

この合宿研修、最初の頃は、担当者が必ず終日在席してくださったのだが、回を重ねていくうちに朝夕だけ、などとなっていた。

そして、ある回、とうとう朝からどなたもいらっしゃらない、という事態になった。

どうも、メインの事務局が東京にあって、大阪支社の同じ部署の方に「当日の立ち上げは見届けてください」と連絡があったそうなのだが、代行を依頼された大阪の担当者さんが都合により来場されなかったのだ。(会場は、宿泊もできる研修専用の郊外の施設で、先方側が手配していた)

朝フロントで受け取ったメモには「お手数ですが、田中さんのほうで開始しておいてください」とあった。「勝手知ったる・・」という意味で任せてくださったのだろう。

さて、こういう日に限って、「あ゛ーーーーーー」と思うような出来事が起こるものである。

12-3人くらいの参加者(全員男性)が関西圏から集まってきていた。研修の開始時は、椅子だけで円陣になり、アイスブレーキングをした後、軽く自己紹介をしていただこうとしたその時・・。

最初の男性が、むすっとした顔で自分の名前をおっしゃった。それに続いて、口から出てきた言葉は以下のようなものである。

「あのぉ、オレ達、こんな研修受けたくないんですけど」・・・ん?
「さっき、ロビーで全員で話し合ってたんですけど、こんなの受けたくないんですよ」・・・んん?
「意味ないし。大体、オレ達、10年もこの仕事やってきて、それなりに現場で頑張っているわけだし、今更、コミュニケーションなんてやってられないですよ。」・・・んんん?
「なるほど、皆様で話し合って、そういう風な話になっているのですね」(とりあえず、まずは、傾聴)
「入社した時だとか2年目、3年目って、散々こういうの受けさせられて、嫌な思いを沢山したんです。だから、30も過ぎているし、もういいです。同じ研修ですよね。」
「なるほど。沢山受けられたのですね。・・ええと、同じ研修・・・たぶん、当社が担当したのではないと思うのですが、詳細をお聞きしてもよろしいですか?」

聴けばこういうお話だった。

若手だったころ、コミュニケーション研修を沢山受けさせられた。その研修は、サービスエンジニアである彼らの接客や説明の仕方などを練習を繰り返して学ぶスタイルだった。

講師が顧客役をやって、ひとり一人が講師の前で挨拶したり、プレゼンをしたりする。 どうしても、しどろもどろになったり、「えー」「えー」と無駄な言葉を連発したりしてしまう。

すると、講師が、「あなたは、『えーえー星人ですね。えーえー星人で決定です』と断定し、『えーえー星人の○○さん、はい、やり直し』など言うのだそうだ。

さらに、「はい、ダメ!もう一回」「全然ダメですね。えーえー星人なだけじゃなくて、もごもご星人ですね」などとどんどんあだ名をつけられる。

若い時だったので、まだ我慢はできたが、あれをまたやられるかと思うと、堪えられない。 だから、もうこの研修は受けたくない。

・・・。

聴いていて、切なくなった。

「○○星人」と命名したり、「ダメです、はい、やり直し」などと強く命令したりするスタイルを私たちはとっていない。当然、これは、どこかよその研修会社が提供したプログラムである。

彼らは10年近く経っても、その時受けた傷が癒えていないのだ。 研修を受けて、心が傷つくなんてことがあってはならない。

講師だけでなく、参加者も大人である。大人として対等ではないか。 なぜ、偉そうに上から目線で「○○星人」などと名づけたりするのだろう? 講師はそんなに偉いのか?(いや、断じて、偉くなんかない!)

この話を聴いて、私は以下の説明をした。

1.お聞きした研修を提供した企業と、当社(グローバルナレッジ)は別モノであること。私たちは、「成人学習の原理原則」(オトナの学び)を基本にして研修を進めること
2.演習もフィードバックもあるし、参加者同士でのフィードバックだけでなく、講師からもフィードバックはするが、それは、「よい点を指摘」することと「こんな風にするとよりよくなると思われる」と提案するスタイルであること。何よりもご本人の気づきを重視していること
3.それでも抵抗のある演習があれば、スキップしてもよいこと(見ているだけでも勉強にはなるので)

そして、最後に提案を2つ。

1.とりあえず、午前中、ここで「違う企業の違うスタイルの研修である」ことを体験していただけないか?
2.それでもどうしてもいやだ、抵抗がある、と言う場合は、私の一存で帰ってよい、とは言えないので、それぞれの方が上司に連絡を取り、退出するかどうか判断していただきたい。

・・・

ここまでで30分以上を費やした。まだ、1人目の自己紹介の途中であった。

一人がポツリとおっしゃる。 
「じゃあ、とりあえず、午前中はここにいます」 
「ありがとうございます。では、自己紹介を続けましょう・・」

最終的には、全員が3日目の最後まで参加してくださった。 表情も和らぎ、最後には、「ありがとう!色々学ぶところがあった、気づきがあった」と言って笑顔でお帰りになった。

・・・・・・・・

企業の研修というのは、「オトナの学びの場」のひとつだ。(「星人」の話も昨日書いた「神聖化」と根っこが同じかも知れない。)

私自身がまず、そのことに対して、ぶれない態度をもちたいと思う。

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【追記 ~ 2009年8月12日15時30分 ~】

「よく落ち着いて対応できましたね」と感想を頂戴しました。が、このとき、内心、「逃げたい」とも思いましたし、本当に心臓が口から飛び出そうなほど、ドキドキしました。

男性全員が怒った顔をしていて、しかも、椅子にまっすぐ座らず、横向きにかけていらっしゃったのです。その威圧感といったらそりゃ凄いもので。

泣きそうなほどのバクバク・ドキドキでしたが、いかんせん、相談すべき担当者不在。なんとかせねば。こうなったら、「話聞くしかないな」と腹をくくったわけです。

最後までドキドキしてました。だから、10年以上経った今も忘れられないのです。

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