新人の頃、とてもマジメだった私。入社1年目は、「取っていいよ」と言われた夏休みすら2日間しか取らず、とにかく、出勤し続けた。
冬に入り、軽く風邪を引いたものの、熱があるわけでもなく、ただ鼻水、咳、喉の痛み、といった症状だったため、それでも出勤し続けていた。
ただ、はたから見ると、明らかに「風邪を引いている人間」であったので、風邪を引いた3日目くらいに、グループリーダーから「今日は帰っていいよ」と言われてしまった。
ところが、何度も言うが、当時、超!がつくほどのマジメだった私は、「いえ、このくらい、大丈夫です。仕事に差し障りないですし」と帰宅を拒否した。
今なら、「え?帰っていいですか?それなら、これで」と、ほいほい帰宅してしまうだろうが、とにかく、「休むことは罪悪」と思っていた新人だったのである。
「帰宅していいよ」という言葉をかたくなに拒絶していたら、とうとう、リーダーがこう言った。
「あのさ、田中さんの体調を心配しているんじゃなくて、そんな風に派手に風邪引いていると、周りにうつったりするかも知れないでしょ。ほら、よく、”腐ったみかん”は排除しろ、と言うじゃない。だからさ、帰って」
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ああ、「金八先生」以来だ。「腐ったみかん」っていう言葉を聴くのは。
ナマで「腐ったみかん」を口にする人に、はじめて出会った。
『そうか、私は、今、腐ったみかんなのだ。自分が大丈夫と言い張っている場合じゃないのだ。ここは職場だから、周りにうつさない、ということもお仕事のウチなのだ。』 と悟り、素直に帰宅した。
会社というのは、自分の都合だけで生きていてはいけないのだな、自分がガンバレばいい、という論理だけで進むものじゃないのだな、と、新人の私は、学んだのであった。