「他流試合」の意義について先日このブログで解説しましたが、それでふと思い出した話があります。
いつのことだったか、「チームワークとリーダーシップ」という、中堅社員向けの公開講座にある企業の新入社員が4-5人参加されました。
本当に入社したてで、持っていた名刺が、なんと、
「新入社員
山田 太郎」
というようなものだったほどです。人事部付けの状態ってことですね。
このコースは、「チームの目標設定」だとか「役割分担」だとか「指示の仕方」だとか、はたまた、「動機づけ」だとか「チーム内の円滑なコミュニケーション」だとか「葛藤処理」だとか、あらゆる項目を演習を通じて学ぶのですが、新入社員で、まだ実務についていない方たちは果たしてついてこられるだろうか?と講師としてはシンパイしました。
蓋を開けてみたら、まず、参加した新入社員が「前向き」で「明るく」、「謙虚」で「努力家」だたことが功を奏して、他社から参加されている多くの「ビジネスパーソンの先輩」方の助けを得ながら、なんとか全ての演習をこなしたのです。
もちろん、他社の中堅・ベテラン社員の皆さんも新入社員たちが浮かないように配慮してあげていました。
最後に新入社員の皆さんは、こうおっしゃいました。
「入社してまだ1ヶ月くらいで、こういう研修を会社から受けさせてもらいました。最初はついて行かれるか不安でしたが、皆さんが暖かく助けてくださったのでなんとかついていくことができました」
「実務にまだついていない段階で、分からない部分もあったのでは?」と尋ねると、
「たしかにそれはありますが、それでも、”リーダー”や”上司”が何をどう考えて行動しているのかを知ることが、自分たちがこれから学び成長していくためにとても役立つと思います。
上司や先輩の意図も理解できたので、先に受けることができてラッキーでした」
と。
これは、99.9%は「一社向け集合教育」のスタイルで行われる「新卒・新入社員研修」では体感できないことですねぇ。
新入社員を「中堅向け」の公開コースに派遣された企業の人事担当の方は、思い切ったことをなさるなあと感心しました。
それにしても、
「新入社員
山田 太郎」
という名刺、インパクトありますね。絶対にわすれませんから。
あとで、この企業の人事の方にうかがったら、「社外の研修を受けるのに、名刺を持っていないとかわいそうかな、と思って作ることにしたのですが、人事部付でもなんだし、肩書きないし、じゃあ、新入社員って印刷してみました」とおっしゃっていました。
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以前読んだ『リフレクティブ・マネージャー』(中原淳・金井壽宏著、光文社新書)に、こういう一節がありました。中原さん執筆部分です。
「働く大人の社外での学習は、その人が所属する会社や組織での支配的なものの見方、会社や組織の「アタリマエ」を疑い、問い直すような学びを引き起こせる可能性がある」(P.285より)
この場合は、研修を指しているわけではなく、社外に出て、いろいろな属性の方とゆるくつながっていくようなことを想定しているようですが、いずれにしても、「社内に留まっていたら、考えが凝り固まるよ」ってことですよね。同感。
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