2010年5月26日水曜日

旧ブログ記事:共感も、実は難しい(2010年5月26日掲載)

先日、「アクティブ・リスニング」の仕方の内、「相手の発言を繰り返す」+「次を促すオープンな質問をする」のが難しいという例を紹介しました。

今日は、「共感」が難しい、というテーマで、また会話を再現してみます。

「相手の話を共感することは大事」
「共感されれば自分に対して心理的な壁も低くなるし、より本音を話しやすくなる」
「共感は、信頼関係を構築する第一歩」

などと言うのは簡単だけれども、会話で実践するのはとても難しいのです。

【理想の会話】 (M:マネージャ、S:部下)

S:「最近、仕事に対するモチベーションが下がり気味なんです」
M:「ほぉ、そうか。モチベーションが低下しているか・・。そりゃ大変だな。何か原因があるの?」
S:「いろいろなことが重なって、自分は何をしているんだろう?と疑問に思うようになって」
M:「いろいろなことって、たとえば?」
S:「昨日、お客さんに第二次提案を持っていったんです。そしたら、またつき返されて。理由を聞けば、第一次提案の時に”ダメ”って入れた内容が入れてない、とむちゃくちゃなことをおっしゃるんです。”ダメだ、これはいらない”とおっしゃるから、抜かしたのに、理不尽ですよ」
M:「そうかあ、なるほど。そういうことを言われたから腐ってるんだね。他には?」
S:「この件で、隣のチームの山田さんにも相談に乗ってもらっていたんですけど、今度は、山田さんが、”そんなに手伝ってやれないよ”ってキレちゃって、社内の連携までおかしくなって・・」
M:「同僚にまで冷たくされたのか。そりゃ、切ないね」
S:「来週から後輩の面倒を見ろって言われているじゃないですか、僕。だけど、こんな自分でいいんだろうか?と考え始めたら、なんだか自信がなくなって、やる気まで低迷して来たんです」
M:「いくつかのことが重なるとそういう気分になることもあるよねぇ。まあ、落ち着いてひとつひとつ解決していくか。何から整理しよう・・?」
S:「それじゃあ・・・」

【ありがちな会話】

S:「最近、仕事に対するモチベーションが下がり気味なんです」
M:「何?モチベーション?そういう言葉が流行っているのも困りもんだなあ。で、何?」
S:「ええと、いろいろなことが重なって、自分は何をしているんだろう?と疑問に思うようになって」
M:「そりゃ、若いうちはいろいろ悩むわな」
S:「・・・」
M:「ひとつくらい言ってみろ」
S:「昨日、お客さんに第二次提案を持っていったんです。そしたら、またつき返されて。理由を聞けば、第一次提案の時に”ダメ”って入れた内容が入れてない、とむちゃくちゃなことをおっしゃるんです。”ダメだ、これはいらない”とおっしゃるから、抜かしたのに、理不尽ですよ」
M:「客ってのは、理不尽なことを言うもんだ。そういうのを乗り越えてこそ、一流の営業になれるんだし」
S:「まあ、そうですけど・・・」
M:「他にもあるのか?」
S:「この件で、隣のチームの山田さんにも相談に乗ってもらっていたんですけど、今度は、山田さんが、”そんなに手伝ってやれないよ”ってキレちゃって、社内の連携までおかしくなって・・」
M:「山田って、ちょっとエキセントリックなところがあるからな、気にするな」
S:「・・・」
M:「ま、なんだな。来週から後輩も配属されるんだし、せいぜい頑張れ。モチベーションだかなんだか分からないけど、そんなもの、気力で乗り切れ。俺もそうしてきた。苦労が自分を成長させてくれるんだぞ」
S:「・・・はい・・・なんとかします」

かなり脚色していますが、「自分」の視点からは、なんら共感できない話については、2番目のような感じになり勝ちです。
こうなってしまうと、この上司には、「感情」がまつわる話題では相談をしたくなくなるものです。「この人に言ってもしょうがない」と思ってしまうから。

これほど大げさではなくても、先日もこんな例がありました。

「僕、メロンが嫌いなんです」
「ええー、メロンっておいしいじゃない」
「あの、なんともいえない緑くさいのが苦手で」
「おいしいのを食べたことないんじゃないの?」
「何度か試したんですけど、やっぱり、ダメで」
「メロンが嫌いな人って珍しいわね。おいしいのに」
「・・・」

聞き手はメロン好きらしく、全く、共感しないんです。

このとき、

「そうか、メロンが嫌いなのね」とか
「人それぞれ嫌いなものってあるわよね」

と受けてしまえばいいのに、「あれこれ」と提案したり、そのつもりがなくても相手の言い分を「否定」したりしてしまう。

「共感」というのは、「同じ気持ちになってあげよう」ではありません。
「相手の気持ち」を理解して、「理解はしたよ、を伝えてあげよう」です。

どんな話だって、いつも「同じ気持ちになる」ことは難しい。けれど、「あなたの気持ちを理解はしたよ」くらいは出来そうな気がします。(稀に、「どの部分を捉えて理解したらいいか」わからない話もあるとは思いますが)

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