2010年5月21日金曜日

旧ブログ記事:「訊きたいことを訊く」から「話したいことを聴く」へ(2010年5月21日掲載)

OJT(若手育成)の話が続いたので、たまには、管理職の話を。

管理職研修、というと古臭い感じがし、マネージャ研修というと、言葉のマジックで少しかっこいい感じがします、が、それはさておき。

マネージャの皆さんに、たとえば、コーチング研修等で、「部下の話をよく聴き、掘り下げる質問をしましょう」という”アクティブ・リスニング”の練習をしていただくことがあります。

段階的にレベルを上げて学ぶので、最初は業務内容ではなく、身近な趣味について聴くという設定で行います。

マネージャ役がすべきことは2つだけ。「オープンな質問する」「相手の言葉を復唱する」です。

【理想の会話例】

M(マネージャ役):「Sさんの趣味は何ですか?」
S(部下役):「私の趣味は、ウォーキングです」
M:「趣味は、ウォーキングですね」
S:「はい」
M:「どのくらいの頻度で行いますか?」
S:「平日は難しいので、土日のいずれか1日はウォーキングをしています」
M:「土日の1日を使ってなさるのですね。一度にどのくらい歩きますか?」
S:「3時間くらいかなあ」
M:「3時間も歩くのですね。3時間で何キロくらいになりますか?」
S:「5-6キロといったところかな。1万5000歩は行きますね」
M:「5-6キロで、1万5000歩ですか。それをするきっかけはなんですか?」
S:「健康診断でメタボ予備軍と言われまして、歩けと医師に勧められたことです」
M:「お医者さんに言われたのですね。どんな変化がありましたか?」
S:「体重は変わらないんですけど、腹回りが少ししまってきたような・・・。」

・・・・

わかりますか?マネージャ役は、決して自分の考えをさしはさむことなく、相手の答えを復唱し、次を促す、掘り下げる質問をしているだけです。簡単そうに見えませんか?

ところが、これが、案外難しいのです。

【よくこうなってしまうという例】

M(マネージャ役):「Sさんの趣味は何ですか?」
S(部下役):「私の趣味は、ウォーキングです」
M:「ウォーキング、いいですよねぇ」
S:「ええ」
M:「私もやってますよ。毎日ですか?」
S:「平日は難しいので、土日のいずれか1日はウォーキングをしています」
M:「そうそう、結局、平日は疲れちゃうからできないんですよね。1回にどれくらい?」
S:「3時間くらいかなあ」
M:「3時間というと5-6キロってところかなあ。歩き方にもよるけど」
S:「ですね。1万5000歩は行きますよ」
M:「そうかあ、私は1万歩かなあ、写真撮ったりしちゃうんで。でも、健康にいいですよね」
S:「そうですね」

・・・・・

こうなってしまう。

質問して、答えをもらうと、その答えを聞きながら、自分の考えを整理したり、言いたいことを考え始めたりしてしまう。そして、自分の軸から質問をする。すると、だんだん、「オープン質問」ではなくなり、「私はこう、なんだけど、あなたはどう?」という質問に変化していく。最後は、「あれ、いいよね」とクローズ質問になっている。

趣味を話している側は、「自分のこと」を話したいのに、「あれは、いいですよね」とか「僕も健康のためにやっているんです」と先に言われちゃうので、話のレールが敷かれた気分になる。

・・・・

人は、自分の軸から質問し、会話を展開するのは結構上手にできるのですが、相手の軸から質問し、相手に寄り添って会話を進めるのはとても苦手です。

「訊きたいこと、訊くべきことをまず訊く」というのは、特に、マネージャが仕事上せざるを得ない会話スタイルなので、余計に苦手です。

部下にたくさん話させ、よく理解しようと思ったら、「訊きたいことを訊く」のではなく、「相手が話したいことを聴く」というスイッチの切り替えが必要なのです。

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