2009年10月30日金曜日

旧ブログ記事:あなたは「しなやか派?」それとも「こちこち派?」(2009年10月30日掲載)

●「こちこちマインドセット」・・・ 能力は生まれつき決まっていると考える
●「しなやかマインドセット」・・・能力は自分の努力次第で伸ばすことが可能だと考える


キャロル・S・ドゥエック 著 『「やればできる!」の研究』 草思社 を読みました。

人の能力、人生は、「自分に対する信念」にずいぶん左右されてしまう、という研究をまとめたものです。

人が「自分はこうなんだ」と思っているものは、大半が「マインドセット=心のあり方」の産物である、と言っています。可能性が発揮できないとしたら、マインドセットに起因しているかも、と。

「こちこちマインドセット」の人は、

●自分の能力は固定的で変わらないと考え
●自分の能力を繰り返し証明せずにはいられず
●時に、いかに賢く見えるだろうか、とか、認められるかとかびくびくもする
●だから、できると分かっていることにしか挑戦しないこともある
●つまずいたら失敗と考え、これまでの努力もすべて水泡に帰すとも思う
●結果的に「学習」から遠ざかってしまう

などなど。

「しなやかマインドセット」の人は、

●人間の能力は努力次第で伸ばすことができると考え
●他人からどう評価されるか、よりも、自分を向上させることに関心を向ける
●成長できなければ失敗と考える
●努力することで能力を伸ばし、より有能にしてくれると思う
●能力が開花するのには時間がかかることもわかっている
●結果を失敗しても、力を注いだこと自体にも意義を見出せる

などなど。

「マインドセット」は、自分の意思で変えられる、ともあります。

マインドセットは学習者自身だけでなく、親や教師など”指導”する立場の人間にも必要なものだそうです。

なので、たとえば、褒めるときに

●頭の良さなどを褒めるのではなく
●努力や成長に対して言葉をかける

とよい、とあります。

親や教師がまず、「知力や才能は伸ばせるもの」と信じ、学ぶプロセスを大切にする気持ちが重要とのこと。

なるほど、とうなずきつつ読みました。

ところで、ヒューマン・スキルの研修でも「しなやかマインド」と「こちこちマインド」の例に遭遇することがあります。

たとえば、「マネージャとしてどんな風に部下と接するとよいか」というテーマで議論したとします。そんな時に、こんな風におっしゃる方が議論に水を差してしまうことがあるのです。

「マネージャとして部下と接するというテーマで話すのに、もう片方の当事者である部下がこの場にいないのでは不十分だ。だから、この議論は意味をなさない」
と。ちょっと「こちこちマインドセット」なのかな。

でもたいていは、「いろいろな視点、観点から話しみよう」と前向きに取り組み、他社・他部署の方の意見に耳を傾けつつ、多くの「気づき」が得られた!とオープンマインドで取り組んでいらっしゃるようです。こういう場合は「しなやかマインド」ですね。

ドゥエックは、どんなことでも「努力すれば達成できる」とは言っていません。ただ、何もかもが「生まれつきの才能」だけで決まると思ってしまうのは、自分の伸びシロを信じていない姿勢になるからもったいない、と考えているのです。

ドゥエックさんは、スタンフォード大学の心理学教授だそうです。
読みやすい翻訳で、アメリカ人の本らしく事例も豊富です。

先日紹介したクランボルツさんの『その幸運は偶然ではないんです!』とセットで読むと、キャリアや成長に対して「しなやか」な考え方を持つヒントが得られるように思います。

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