2009年12月4日金曜日

旧ブログ記事:『リフレクティブ・マネージャー』を読んだ(1/3)(2009年12月4日掲載)

本題に入る前に、今朝手に取った「R25」の最終ページのコラムがとてもよかったので、お知らせ。帰り道、どこかにまだ残っているかも。

石田衣良さんの文章。「だから、どうした!」というタイトルで、景気悪いからどうした!不景気だ、と不機嫌になったり、誰かのせいにしたりせず、まずは、この1年のご褒美を自分に贈り、あとはこの国の再建のためにみんなもっと元気に働こう!というものでした。
(うまく要約できていないんだけれど、決して、自己責任論とかそんなことを言っているのではなく、とても前向きで元気が出るコラムでした。)

さて、本題。

中原淳・金井壽宏両氏共著『リフレクティブ・マネージャー』(光文社新書)を読みました。

中原さん・金井さんお2人の本はほぼ読んでいるので、共著となれば、ワクワク感倍増。

全部で5章立て、往復書簡風に書かれているものです。あとがきで中原さんも触れていますが、金井さんの知識量がハンパじゃない。

いや、学者さんなので当然なのかも知れないですが、何かの現象や事例が登場すると、「●●という学者は、××という理論をこういう風に展開している」と、理論的な背景も添えるのですが、まあ、その種類というか、カバレッジの広さが目が点になりそうなほど凄いのです。

凡人として、これだけの本や文献(中には英語のものも)を読むのは到底無理なので、「いろいろな学説や研究」をコンパクトに教えてくださってありがとう!と感謝の念を禁じえません。

ま、そんなことはさておき、章立てごとにフリーフィングを。

1章:「上司拒否。」と言う前に
マネージャになりたくないという人が増えている。20年くらい前までの会社員には「マネージャー」が上がりみたいな、目雑べきポジションみたいなところがあったけれど、今のマネージャー予備軍は必ずしもそうは思っていない。

中でも、以下のあたりは「ああ、なるほど」と思いました。

P.36から引用。
「かつて課長は部下に対して指示・命令を下す存在だった。組織への適応もモティベーションの喚起も、課長ではなく部下本人の責任だった。ところが、今のマネージャーには、部下に組織に適応してもらうこと、、部下を「その気」にさせることが求められ、カウンセラーとしての役割が重要性を増している。」

このことを、中原さんは、「・・・上司の役割の重要性を承知しつつ、私は上司の立場に思わず同情してしまう」とも書いています。

でも、「世代継承性」という、中年期以降のキャリアの新しい課題もあるよね、とは金井さん。

マネージャーとして、後進を育てていくことが、自分自身の学びや成長にも寄与するんじゃないか、と。

中原さんは、「30代のボクにはまだピンと来ない」ってなことを書いていらっしゃって、このあたりが、「30代と50代」の違いで、面白いなあ、と思いました。

★追記(2011年5月21日)
「世代継承性」を意識し始めるのって、何歳ぐらいだろう? 45以上という感じがするのだけれど、職種によるのかな? 男女でも違うかも知れないし。 「定年」が見え始めた時、体力に対する自信に影が差した時、世代継承性、ということを考えるような気もします。

2章:内省するマネージャー -持論をもつ・持論を棄てる
専門家には、内省(リフレクション)が非常に重要だというドナルド・ショーンの研究(内省的実践家)、アージリスの「二重ループ学習」についても述べています。

内省はなかなか1人でできないので、内省に他者が介在することが重要とも。(この他者を介しての内省の場になるのが、「対話」(ダイアローグ)。

これらを総合するに、

●人は内省することで、自らの行動をよりよいものにできる(内製的実践家)
●内省には他者の協力が必要(ダイアローグの重要性)
●内省していく中で、自分の学びや成長を振り返るだけでなく、その方法までをも振り返り見直していくとよい(二重ループ学習)

ということかと思います。

金井さんはいろんな本で「マネージャやリーダーは”持論を”もて、そのためにも理論を活用してほしい」と書いていらっしゃるのですが、この本にも以下のように述べてます。

P.133から引用。
「リフレクティブ・マネージャーをめざす人たちに言いたいのは、研究者の理論なんか関係ないと背を向けて自己流に留まるのではなく、経験からの内省によって自らつくり出した持論を、研究者によって検証された抽象度の高い理論とうまく突き合わせ、自分なりの裏づけを取ってほしいということだ。理論と両立するような持論こそパワフルなのであり、(略)」

ただし、「持論」に凝り固まって、時代に合わない、現状に合わない持論に執着するのはダメなので、何度もそれは見直し、時に棄論する、持論を組み立て直すことも必要だとあります。

深く納得。

★追記(2011年5月21日)
この「持論を作ろう!」については、とても共感するのだけれど、初めから持論ありき、で、それを「強固」に守り、変えようとしない、となると話は別だなあ。色々な人の考え、自分自身の試行錯誤、あるいは、アカデミックななんやかやを融合した後に持論は作りたいもの。では、「持論」を作るべき歳ってあるのだろうか? 役割次第なのかな? 30歳でも社長はいるわけだし。このあたりに興味ある。

※ 続きは別エントリーにいたします。

*** 追記(2011年5月21日) ***

今、芦屋広太さんとITproサイトで行っている「往復書簡」連載は、この本の手法が頭にあってものものでした。編集者と「こういう感じにしたい」と伝える時、この『リフレクティブ・マネージャー』が頭にありました。


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