私の印象に残ったことを紹介します。
【メインスピーカー:三井物産 渡辺雅也さん】
2004年~行っている組織変革の事例紹介でした。
「よい仕事」とは何かを創業者のメッセージに立ち返り、全社員6000人(海外拠点も含む)で考えるワークショップを開き、だんだんと理念浸透をさせていった、というものです。
どこかで聴いたことがある話だなあ、とずーっと思っていたのですが、帰宅してから思い出しました。
ファミリーマートです。「ファミマらしさ」を全社員で追究し、浸透させていくワークショップを行って組織変革を行ったというもの。
「こんなことやってどういう意味があるんだ」「いいなあ、こういうワークショップをするだけで給料がもらえるんだから」というような抵抗も多々あった中で成し遂げた、というのは、すごいことだと思います
自分だったら途中でくじけてしまうような気がします。
【神戸大学 金井壽宏さん】
金井さんは、三井物産渡辺さんの話を受けて、「個人と組織」にとっての「変革」について解説してくださいました。
●企業理念の浸透というと、課題(P)直結なので、Pの影響力が大きいと思うかも知れないが、実際には、圧倒的に思いやり・配慮(M)が強く関係している。(PとMは、「PM理論」のそれです)
●主語が「企業」とか「組織」だという場合、その議論はすべてアヤシイと思ったほうがよい。「組織が変わる」「組織が元気だ」・・・。主語が「わたし」でない限り、何も変わらない。
●「変わらなければならない」時、普段、”よし”とされることがネックになることがある。たとえば、個人にとっての「慣れ」、集団にとっての「団結の強さ」、組織にとっての「強い文化」。これらは一見よいことのように思われるが、変革をする際に、邪魔になることもある。
さらに、「ラインホルト・ニーバーの祈り」を紹介されました。
「変えられるものを変える勇気と
変えられないものを受け入れる心の静けさと
両者を見分ける叡智を与えたまえ」
個人の「変えられないもの」がシャイン氏による「キャリア・アンカー」ですね、と。
【Q&A】
●「変えていいものと変えなくていいものの見分け方は?」
金井さんは、こう答えます。
全部変えるのです。ただし、「そこを変えたら、その組織や集団らしさがなくなる」というもの以外は全部変えたほうがよい。とはいえ、「そこを変えたら、その組織らしさがなくなるもの」といった時点でそこにまた言い訳が発生する可能性がある。だから、とにかく、「全部を変える」つもりでやればよい。「ここを変えたら”らしさ”がなくなる、と思うことでも、小さく変えてみて試してみる」価値はある。
たしかに、「これは変えちゃだめだ」という例外を沢山設けているうちに結局、どこも手をつけられなかった・・・という結果になるような気がします。
言い訳が入り込む余地を与えないようにするためにも、とにかく「全てを変えるのです」とは、ずしりと心に響きました。
●「企業理念の共有とか組織変革の遂行におけるミドル(マネージャ)の役割は?」
トップは、抽象的なメッセージを出す。それをミドルが具体化していく役目を負っている。 こういう変革とか理念浸透みたいな場面で、トップが心からコミットしているかどうかはとても大きいだからといって、トップダウンだけがそのやり方じゃない。たとえば、ミドルが中心になって変わっていく活動をし、それをトップがあとからオーソライズするという例も多々ある。 名君系のトップか、アドミ系のトップかで、ミドルは自分達の動きを考えればよい。
これは、つまり、社員が「トップが何も決めてくれないから」と文句を言うのでもなく、トップも「社員が考えればいいんだ」と突き放すのでもなく、それぞれが自分ができることを考え、動く、という意味だと思ったと同時に、傍観者・評論家ばかりでは組織変革や企業理念の浸透など絶対にできないんだろうな、と自戒を込めて心に刻みました。
【中原さんのラップアップ(まとめ)】
「導管モデル」を引き合いに出し、企業は、理念をあの手この手(例:カードを持たせる、額に入れて掲げる、唱和させる?)で社員に「注入」しようとするが、これはどれだけやっても「導管モデル」に支配されている状態である。 日本人は14000時間の被教育体験からこの「導管モデル」を自らの教育感として培ってしまった面がある。
組織変革とか理念浸透みたいなものを「注入」するのは、トップダウンによる「導管モデル」イメージ。
「対話」というと、ボトムアップのイメージ。 でも、対話だけに依存するのもよくない。トップが決める、トップが関与することも大事。 そこに「第三の道」があるのではないか。
●トップは、あいまいな言葉であっても基盤づくりをする。(三井物産の例では「よい仕事」)
●ボトムアップで、対話や学習によって腹落ちさせていく。(三井物産の例では、全社員によるワークショップで「よい仕事」を一人ひとりが定義していく)
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今年最後のLearningbar@東大。 200人くらいの参加者。
いつも以上に熱気むんむんで、「皆で話し合いましょう」の時間は、隣の方の声も聞こえないほどに。
そうそう、お隣が山形大学の酒井さんという研究者で、近くの5人で話し合いをした際、とても上手にファシリテーションしてくださいました。2月に中原さんとご一緒にイベントをなさるそうです。
「越境の学習」について、とおっしゃっていました。(「『リフレクティブ・マネージャー』でも社外の学びについて触れられていましたよね。それです。」だそうです。)
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