2009年5月26日火曜日

旧ブログ記事:現代の「OJT」とは何か(1)(2009年5月26日掲載)

OJTとは何か。数回に分けて解説します。

「今、企業でOJTと呼んでいるもの」についてです。

OJTは、On the Job Trainingの頭文字をつなげたもので、「職場における人材育成」を指します。

その昔、おそらく私が社会人になった80年代ごろは、まだ自然に人が育つ環境だったような気もします。周りが何くれとなく世話をしてくれたし、関係ない部署の人が叱ってもくれたし、顧客も企業を超えて教えてくださったこともあったので、「自然なOJT」が機能していたのではないかと思います。

失われた10年を経て、2000年代に入り、企業によっては、「久々に新人がやってくる!」ということもあり、「どうやって育てよう!?!?」と困惑し始めたのです。

教えるノウハウが、しばらくの採用手控えで継承されなかった。それだけでなく、自然に育てる(育つ)という余裕も現場にはなくなった。マネージャは、プレイヤーとなり、とても新人の面倒を見ているヒマがない。

先輩もしかり。

このままの状態でいたら、新卒者を採用したものの、誰も育てないので、新人が育たない、ということになる。 「育つ土壌じゃない」と見極めた新人自身も早々に転職していってしまう。

そ・こ・で、です。

各社が始めたのが「OJTの制度化」です。「制度化」というのがポイント。

人事部や人材開発部などが旗振り役となって、「自然なOJT」から「制度化されたOJT」へと転換を図り始めたのです。私の感覚からいうと、このムードは2003年ごろ始まった感じがします。

制度化にはいくつかポイントがあります。

● 人事部・人材開発部が旗振り役となる
● 新入社員1人に対し、配属先の各部署で1人の先輩社員をアサインする(これをOJT担当者などと言う)
● OJT期間は、新入社員配属後から翌年3月まで(入社丸1年が経過するまで)がもっとも多い
● 育成計画や育成報告書などのツールを作り、新入社員、OJT担当者、所属長、人事部/人材開発部などがコミュニケーションをはかる

「OJTの制度化」によって、

● 誰が育てるのか、が明確になるため、新人が「放置される」ことはなくなる
● 人事部・人材開発部でも育成の成り行きを追っていくことが可能となる

などのメリットがあります。「OJT」が見えるようになってくるのです。


さらに、

●新卒新入社員の立ち上げが早くなるだけでなく、
●「OJT担当者」の成長著しい

という副産物もあります。

「OJTは機能していない」と言われることがありますが、これは、<従来の>という冠をつけたほうがいいように思います。

なんとなく誰もが寄ってたかって育てていた、そういうのどかな時代の職場における人育てはあくまでも<従来の>OJTです。

今は、「誰がいつまでにどうやって育成するか」をきちんと決めて運営する。「制度化されたOJT」とは、こういったものなのです。

次回は、「制度化されたOJT」のバリエーションについて解説します。

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こういう制度が発足すると、初年度は賛否両論が飛び交って、現場が少々混乱することがあります。

特に「心理的抵抗」が大きいようです。

4-50代の方がおっしゃるのは、たいてい「俺たちはこんなに大事に丁寧に育ててもらわなかった」
「今の若手には甘いのではないか」といった言葉です。 (気持ちはわかる)

そのあたりについても、次回以降、解説します。

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