OJTとは何か。数回に分けて解説します。
「今、企業でOJTと呼んでいるもの」についてです。
OJTは、On the Job Trainingの頭文字をつなげたもので、「職場における人材育成」を指します。
その昔、おそらく私が社会人になった80年代ごろは、まだ自然に人が育つ環境だったような気もします。周りが何くれとなく世話をしてくれたし、関係ない部署の人が叱ってもくれたし、顧客も企業を超えて教えてくださったこともあったので、「自然なOJT」が機能していたのではないかと思います。
失われた10年を経て、2000年代に入り、企業によっては、「久々に新人がやってくる!」ということもあり、「どうやって育てよう!?!?」と困惑し始めたのです。
教えるノウハウが、しばらくの採用手控えで継承されなかった。それだけでなく、自然に育てる(育つ)という余裕も現場にはなくなった。マネージャは、プレイヤーとなり、とても新人の面倒を見ているヒマがない。
先輩もしかり。
このままの状態でいたら、新卒者を採用したものの、誰も育てないので、新人が育たない、ということになる。 「育つ土壌じゃない」と見極めた新人自身も早々に転職していってしまう。
そ・こ・で、です。
各社が始めたのが「OJTの制度化」です。「制度化」というのがポイント。
人事部や人材開発部などが旗振り役となって、「自然なOJT」から「制度化されたOJT」へと転換を図り始めたのです。私の感覚からいうと、このムードは2003年ごろ始まった感じがします。
制度化にはいくつかポイントがあります。
● 人事部・人材開発部が旗振り役となる
● 新入社員1人に対し、配属先の各部署で1人の先輩社員をアサインする(これをOJT担当者などと言う)
● OJT期間は、新入社員配属後から翌年3月まで(入社丸1年が経過するまで)がもっとも多い
● 育成計画や育成報告書などのツールを作り、新入社員、OJT担当者、所属長、人事部/人材開発部などがコミュニケーションをはかる
「OJTの制度化」によって、
● 誰が育てるのか、が明確になるため、新人が「放置される」ことはなくなる
● 人事部・人材開発部でも育成の成り行きを追っていくことが可能となる
などのメリットがあります。「OJT」が見えるようになってくるのです。
さらに、
●新卒新入社員の立ち上げが早くなるだけでなく、
●「OJT担当者」の成長著しい
という副産物もあります。
「OJTは機能していない」と言われることがありますが、これは、<従来の>という冠をつけたほうがいいように思います。
なんとなく誰もが寄ってたかって育てていた、そういうのどかな時代の職場における人育てはあくまでも<従来の>OJTです。
今は、「誰がいつまでにどうやって育成するか」をきちんと決めて運営する。「制度化されたOJT」とは、こういったものなのです。
次回は、「制度化されたOJT」のバリエーションについて解説します。
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こういう制度が発足すると、初年度は賛否両論が飛び交って、現場が少々混乱することがあります。
特に「心理的抵抗」が大きいようです。
4-50代の方がおっしゃるのは、たいてい「俺たちはこんなに大事に丁寧に育ててもらわなかった」
「今の若手には甘いのではないか」といった言葉です。 (気持ちはわかる)
そのあたりについても、次回以降、解説します。
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