SI企業に勤める役員の方から聞いた話です。
彼が一部門の本部長をしていた時、ものすごく大きな(数百人規模)プロジェクトの「火消し」を任命され、途中からPM(Project Manager)になったことがありました。
まあいろいろあって、数ヵ月後にプロジェクトは終結させたのですが、その後、コアメンバ十数人だけで反省会をしたそうです。
その中で、こんな話が出たといいます。
「実は・・・私たちは、かなり早い段階から、まずい、やばいと思っていたんだけど」
・・・。
「それをリーダーや上司に何度か進言したものの、言っても何も変化しないことが多く、その内、言うのを止めてしまった」
・・・。
このPMは、「そうか。誰もが問題を認識していたのに、コミュニケーションが阻害されたことでメンバ全員の無力感を増幅させていたのか。だから、こんなに火を噴いても誰も何もしなかったのか」と驚いたのだそうです。
つまり、プロジェクトのマネージャやリーダー、サブチームのリーダー、サブリーダーといった立場の人間だけでなく、一人ひとりのメンバも問題を認識していたし、そのことは早くから意見もしていたのだけれど、誰に何を訴えても何も変化しない(していないように見えた)ため、だんだん言うのは止めて、プロジェクトがおかしくなることは肌で感じつつも、自分から動くのは止めてしまったのだというわけです。
セリグマンという心理学者が「自分ではこの状況をどうすることもできない、ということを”学んで”しまった状態」を「学習性無力感」と名づけました。
自分ではどうすることもできない、何をやっても無駄だと思う体験を何度も繰り返してしまうと、自分は無力なのだということを「学習する」だけでなく、、仮に「自分の力で打開できる、状況を変えられる」という状態になっても何もしなくなってしまうのです。
メンバの動機づけについて悩むマネージャやリーダーは多いことでしょうが、自分のチーム運営が「学習性無力感」をもたらしていないかどうか、時々振り返ってみることも大事なのでしょうね。
0 件のコメント:
コメントを投稿