2010年1月17日日曜日

旧ブログ記事:『経産省の山田課長補佐、ただいま育休中』を読んだ(2010年1月17日掲載)

『経産省の山田課長補佐、ただいま育休中』(山田正人、文春文庫)を読みました。

経済産業省の山田氏が2004年11月から1年間の育児休業を体験したレポートです。

山田夫妻は同じ経産省に勤務しており、2002年に双子を授かった際に妻が育休を取得。二度目の出産で3人目となる2004年の産後はどうするか?という時、夫である山田氏が育休を取得することにしました。

育休をとるにあたり、周囲から色々なことを言われます。

●うちだったら男性が育休と言った瞬間、完全にアウトでしょうね
●出世は大丈夫か
といった、仕事への影響、周囲との軋轢を話題にする人。

●お前が育休をとるなんて、職場でよっぽど辛い目にでも合ったのか?
と「育児以外の理由を探りたい」と思っている様子のメールをくれた学生時代の友人。

●いいなぁ。リフレッシュになるね
などとのんきなことを言う人。

「男性の育休」は、「とりたい」という人はいても、実現させた人は少ないことの理由を彼は実感します。

Baby誕生から2歳半の双子と0歳児の3人をほとんど親の手などを借りずに世話していきます。(妻はすぐに職場復帰)

堂々と育休を取ったはずが、保育園でも、子供の検診でも「今日、ママは?」などと聞かれ、「私が育休をとって、この手で育てているんだ!」とフンガイしたり、誰(大人)とも話さない日々が続くと、妻が帰宅してから延々と子供のことをとめどもなく話してみたり、さらには一時、育児ノイローゼのようになったり。

最初は試行錯誤、失敗もしますが、だんだんと子育てのコツがわかってきて、やることもスムースに。 Babyの泣き方の違いを判別できるようになり、日中仕事をしている妻がその区別をつけられないことに、ひそかに優越感を覚えることもあります。

パパ友(ママ友か?)ができ、最初は居心地の悪かった保育園でも居場所ができてきます。

途中、双子ちゃんの病気やBabyの病気も体験して、少しずつしっかりした育児パパになっていく様子は頼もしい。

子育てがこんなに楽しいものだったとは?と気づいた1年後職場復帰を少し延長しようかとすら思うのですが、ある日同僚から、「お前、絶対に辞めるなよ」と釘を刺されます。

「お前の耳には入ってこないかも知れないけど、”男が育休なんて反則技だ”などと言うやつもいる。そういう声からお前を守ってくれている上司や職場の人間がいることを忘れちゃだめだぞ。だから辞めるな」と言われるのです。

苦労の末、結局、Babyの保育園も見つかり、双子ちゃんとは別の園になってしまったため、復帰後はパパとママとで手分けして送迎することになります。

その後、山田氏は、育休の”影響”もなく、数年後には、管理職にもなりますし、子供達もすくすく育っています。また、官庁では何人もの「男性の育休取得者」が登場するなど、環境はずいぶんと変化したことがあとがきに記載されています。

この本を読んで思ったことは、「母親が育児をする」というのは、母乳の問題が絡むから、というだけであって、実はどちらが行っても同じことに悩み、同じことに楽しみを見つけるし、子供にとっては、両親のどちらが育児に深く関わったとしても、あまり関係なさそうだ、ということ。

一方で、社会から見た場合、やはり男性の育休はなぜ?と思われることが多いでしょうし、女性の育休であっても「休み」=「休暇」に見えてしまう部分があるのかも知れません。休業であって休暇ではないでしょうに。(私も同僚に、上記のようなのんきな発言を過去にしたことがあるかも知れません。なんせ、体験していないことは、理解するのって難しいですから。 )

読みやすい文章で、楽しげに子育てに取り組み、合間合間には職場との関係、夫婦での様々な話し合い(たとえば、育児パパが待っているのに、妻が飲み会に参加することについてのクレームみたいなこと)も登場し、多くのことを考えさせられます。子供がどんどん成長し、色々なことができるようになっていく様も面白い。

ワークライフバランスという言葉をよく聞くようになりました。そういう時代に文庫化されたこの本。おススメです。

===============

10年ほど前のこと。

3人の子どもを共働きで育てている同僚(男性)がいました。

月水金:彼
火木土:妻

といったように完全に家事分担をしている、という話を何かの席でしてくれました。

「へぇ、すごいねぇ。うまくやっているんだねぇ。」と楽しくその話を聞いていたところ、60代の男性上司が、突然、「男が家事なんかさせられているなんて、だらしないっ!」と発言し、その場が凍ったことがあります。

上司の次に年長だった私は、その場で上司を一応たしなめたものの、家庭での男女協働が彼には全く理解不能だったようです。

世代間の価値観の問題は、難しいものです。

0 件のコメント:

コメントを投稿